August, 23, 2018, Tampere--色素増感太陽電池(DSSC)は、化石燃料の代替として有望である。タンペレ工科大学(TUT)の研究チームは、従来DSSCに用いられていた二酸化チタンをより安価で、環境に優しい酸化亜鉛で置き換えられることを実証した。研究成果は、Royal Society Open Scienceに発表された。
1990年代にMichael Grätzelが最初に報告したDSSCセルは太陽電池研究の新しい波を作り出した。DSSCsは、伝統的に二酸化チタンナノ粒子でできた基板に構築されるが、他の材料も研究されてきた。酸化亜鉛は、自然界に豊富にあり、結果的にローコストになることから、最も有望である。太陽電池フォトアノード(光陽極)は、環境に優しい湿式化学法で簡単に造れる。これは、商用製造要件に合うように拡張可能である。
タンペレ工科大学(TUT)のNikolai Tkachenko教授は、「二酸化チタンは、この太陽電池アプリケーションでまだ主流の材料である。酸化亜鉛は,有望な特性ではあるが、効率性で二酸化チタンを上回っていない。われわれは、その理由を見いだしたかった」とコメントしている。
「超高速過渡吸収分光法でわれわれはこれら2つの物質を比較することができ、酸化亜鉛ベースのセルを二酸化チタンセルに匹敵する、あるいはそれを上回る最適化法を見つけ出せる」。
太陽電池内の光化学反応は極めて速く,光生成電子の寿命を追跡するには超高速分光法が必要である。
PhD学生、Kirsi Virkkiは、「酸化亜鉛と比べると二酸化チタンでは、光電子が,半導体増感色素界面から半導体バルクに速く逃げることが分かった。これは、世界的に報告されている他のいくつかの研究と一致する」と説明されている。
実用的な太陽電池では、電子は半導体材料を通って外部の回路に到達する必要がある。平均自由行程が長ければ長いほど、電気を生成する機会が高くなる。電子が、半導体材料内部にトラップされていると、結果的に電子は有機色素と再結合し、電流は生成されない。
二酸化チタンサンプルにおける高速再結合の考えられる理由の一つは、両サンプルセットにおける形態差にある。酸化亜鉛サンプルは、長い、単結晶ナノロッドで構成されており、一方二酸化チタンサンプルは、独立したナノ粒子の相互接続ネットワークで構成されている。したがって、各二酸化チタンナノ粒子間に付加的界面が存在する。これらの界面により電子は,一つのナノ粒子内部にスタックし、光電流に寄与するかわりに、有機色素と再結合する。
「電子は酸化亜鉛では、寿命が長いが、二酸化チタンナノ粒子システムにおける寿命は効率的な電流生成に十分であることが実験的に示された。研究チームは二酸化チタンベースのシステムで多くの経験を持つが、光アノード形態の綿密な計画では、酸化チタンを使う効率的な太陽電池を作製できない理由はまだ分かっていない」とVirkkiは話している。
(詳細は、http://www.tut.fi/en)