August, 15, 2018, Gaithersburg--NISTの研究チームは、微小な脳のようなグリッドに光信号を正確に分布するシリコンチップを作製した。これは、ニューラルネットワーク(神経網)の潜在的な新設計を示すものである。
人の脳は、数十億のニューロン(神経細胞)を持ち、それぞれが他のニューロンに数千の接続をもっている。多くのコンピューティング研究プロジェクトが,人工神経ネットワーク回路を造ることで脳をエミュレートしようとしている。しかし従来のエレクトロニクスは、半導体回路の配線を含め、使える神経ネットワークに必要な極めて複雑なルーティングの妨げになることがよくある。
NISTのチームは、シグナリング媒体として電気の代わりに光を使うことを提案している。神経(ニューラル)ネットワークはすでに、素早いパタン認識やデータ解析を含め、複雑な問題の解決で目覚ましい能力を実証している。光の利用により、電荷による干渉が除去され、信号が速くなり、より遠くまで届くようになる。
「光の利点は、科学データ分析のための神経ネットのパフォーマンス向上である。例えば地球と似た惑星の探査、量子情報科学。また、自律走行車向けの高度直感制御システムの開発を促進する」とNIST物理学者、Jeff Chilesは説明している。
従来のコンピュータは、アルゴリズムまたはヒューマンコードルールにより情報を処理する。対照的に、ニューラルネットワークは、処理エレメント、つまりニューロン間の接続ネットワークに依存する。これらは,訓練して、一定の刺激パタンを認識できるようになる。神経あるいは神経形態学的コンピュータは、大きく複雑なニューラルネットワークのシステムで構成される。
論文に発表されたNISTのチップは、光信号を使用するための主要な課題を垂直スタック2層フォトニック導波路により克服する。この3D設計により、ニューラルシステムを真似るのに必要な、複雑なルーティングスキームが可能になる。さらに、この設計は,簡単に拡張でき、一段と複雑なネットワークが必要な場合、追加の導波路層を組み込むことができる。
スタックした導波路は、3Dグリッドを形成している。10入力、つまり「アップストリーム」ニューロンは、それぞれが10出力、つまり「ダウンストリーム」に接続しており、トータルで100レシーバとなる。シリコンウエファ上に製造された導波路は、SiNでできており、それぞれ800nm幅、400nm厚である。研究者は自動的に信号ルーティングをするソフトウエアを作成し、ニューロン間の接続レベルを調整できる。
レーザ光は、光ファイバでチップに直接入力。目標は、各入力を全ての出力グループにルーティングすること。これは、光強度の分布パタンに従う。パワーレベルは、回路の接続パタンと程度を示している。チームは、出力強度制御で2つのスキームを実証した。均一(各出力が同じパワーを受信)と「ベルカーブ」分布(中央のニューロンが最強パワー、周辺ニューロンが低いパワーを受信)。
結果を評価するために、研究チームは出力信号画像を作成した。全ての信号は、顕微鏡レンズを通して半導体センサに集光し、処理されて画像フレームになった。この方法により、同時に多くのデバイスが、高精度に解析できる。出力は極めて均一、低エラーレートであり、正確なパワー分布を確認した。
(詳細は、https://www.nist.gov)