June, 14, 2018, Orlando--物質の微小構造の理解は、それがどのように機能するか、またその機能特性理解のための要である。材料科学のような分野の進歩は、こうした特徴を一段と高解像度に判定する能力をますます高める。ナノスケール解像度の技術、透過型電子顕微鏡(TEM)は、この領域における有望技術の一例である。米国の研究者は先頃、TEMの力を利用して、考えられる最高の解像度で材料の構造を計測する方法をみいだし、すべての個々の原子の3D位置を確定することができるようになった。
米国ローレンスバークリー国立研究所(LBNL)の研究チームは、TEMトモグラフィを使う技術が、強く散乱する原子の3D位置を確定できることを実証した。シミュレーションにより、同グループは、画像強度計測だけを使い原子分解能で原子ポテンシャルの再構成ができること、また電子ビームに強い感度を持つ分子でもそれができることを示した。
「われわれは、電子ビームの非線形伝搬を完全に解いたので、われわれのトモグラフィ再構成法は、弱い散乱サンプルの定量的再構成を、より高分解能、原子分解能で可能にする」とLBNLの電子顕微鏡確率センタ、Colin Ophusはコメントしている。
病院の医療イメージング向けのCTスキャンが、様々な増加量で、一連の2D横断画像を用いて構築される方法と同じように、電子トモグラフィは、サンプルを徐々に回転させ、2D画像を収集することで3D立体を構築する。病院のほとんどのCTイメージングがX線で行われ、骨のような大きなものの特徴を決めているが、TEMで使われる電子ビームでは研究者は著しく優れた解像度で、原子スケールまで見ることができる。
とは言え、原子スケールでは、サンプルの電子ビームに対する非常に複雑な量子力学的効果を無視することはできない。つまりわれわれの研究では、原子的な構造を再構成するために、MRIやCTスキャンで使われるよりも遙かに高度なアルゴリズムを使わなければならない」とOphusはコメントしている。
研究グループが使用したTEMセットアップで、顕微鏡センサに届くエネルギー強度を計測した。これはセンサに当たる電子の数に比例するものであり、各実験ごとの電子ビームの設定の仕方に依存する数である。研究グループが設計した新しいアルゴリズムは、強度データを使い、2D投影画像を3D立体にスティッチした。
しかし、大きな視野で3Dに飛躍することは、単一の2D画像を扱うよりもコンピュータに対する負荷は飛躍的に大きくなる。この問題を回避すために、研究グループはアルゴリズムを改良してGPUsで使えるようにした。GPUsは、一般的なCPUsよりも、並行して、何倍もの数学的動作が可能である。
一般的に原子間の結合は弱いので、生体分子は、TEMを使って研究するのが極めて難しい。金属合金を研究するために使用する電子ビームなら、例えば、一般に生体分子を分離することになるからである。しかし、サンプルの電子線量を下げることで、非常にノイズが多く、現在使用されている他のアルゴリズムでは3D画像を再構成できなような画像を作成することができる。一段と精密な物理モデルにより、チームの新しいアルゴリズムは、その能力を獲得している。
再構成アルゴリズムの開発が完了したので、研究チームは、これまで観察したものをシミュレーションから実験データに適用したいと考えている。計画では、再構成コードのすべてを、広範な研究コミュニティのためにオープンソースとして利用できるようにする。