June, 13, 2018, Lausanne--スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)が開発した新しいシステムは、大きな装置を必要とせず、高精度に分子を検出、分析できる。それは、AI支援で大規模、画像ベースの材料検出に道を開く。研究成果は、Scienceに掲載。
赤外分光法は、有機化合物検出と分析のための基準となる方法である。しかし、それは複雑な手順と大きくて高価な装置を必要とし、デバイスの小型化を課題としている。また,産業および医療アプリケーションでの利用、汚染物質の計測などフィールドで収集したデータの出力の障害となっている。さらに、それは基本的に低い感度が制約となっているため、大量のサンプル量を必要とする。
しかし、EPFL工学部とオーストラリア国立大学(ANU)の研究グループがコンパクトで高感度のナノフォトニックシステムを開発した。これは、従来の分光分析を用いることなく分子の吸収特性を特定できる。研究チームは、すでに同システムを使用して、ポリマ、農薬、有機化合物を検出した。また、同システムはCMOS技術適合である。
同システムは、メタピクセルという数100の微小センサで覆われた改良面でできており、表面に接触する全ての分子に対して明瞭なバーコードを生成できる。これらのバーコードは、先進的パタン認識、人工神経ネットワークなどのソート技術を利用して大量に分析、分類できる。この研究成果は、Scienceに発表されている。
分子をバーコードへ変換
有機分子の化学結合は、それぞれ特定配向と振動モードを持っている。それは分子が光を吸収する仕方に影響を与え、それぞれに独自の「シグナチャー」を付与する。赤外分光は、サンプルがその分子のシグナチャー周波数で光を吸収するかどうかを見て、所与の分子がサンプルに存在するかどうかを検出する。しかし、そのような分析は、大型で高価な研究室用機器を必要とする。
EPFLの研究チームが開発した画期的なシステムは、高感度であり、小型化可能である。同システムは、ナノスケールで光をトラップできるナノ構造を利用し、表面上のサンプルに対して非常に高い検出レベルを提供する。「われわれが検出したい分子は、ナノメートルスケールであるので、そのサイズのギャップを埋めることは重要なステップである」とEPFL BioNanoPhotonic Systems Laboratory長、研究の共著者、Hatice Altugは話している。
同システムのナノ構造は、いわゆるメタピクセルにグループ化されており、各自が異なる周波数で共鳴する。分子が表面に接触すると、その分子が光を吸収する仕方が、それが触れる全てのメタピクセルの挙動を変える。
「重要な点は,異なる振動周波数が表面上の異なるエリアにマッピングされるようにメタピクセルが、整列されていることである」と論文の主筆、Andreas Tittlは説明している。
これによって光吸収のピクセル化されたマップができ、分子バーコードに変換される、すべて分光計なしで行われる。
「われわれ独自の光特性により、広帯域光源やディテクタでもバーコードを生成できる」(Aleksandrs Letis)。
この新システムには多くの潜在的なアプリケーションがある。「例えば、ポータブル医療検査機器実現に利用できる。血液サンプルの各バイオマーカーにバーコードを生成することができる」とDragomir Neshevはコメントしている。
この新しい技術とともに人工知能(AI)を利用して、タンパク質やDNAから農薬やポリマまでの化合物に対して分子バーコードの完全ライブラリを作成し処理できる。研究者にとっては、それは複雑なサンプルに存在する微量の化合物を迅速かつ正確に見つけるための新しいツールになる。
(詳細は、www.epfl.ch)