June, 6, 2018, 東京--早稲田大学理工学術院の片岡淳教授らの研究チームは、量子科学技術研究開発機構と共同で、1-10メガ電子ボルト (MeV) のガンマ線を可視化できる、コンパクトなカメラを開発した。さらに、陽子線治療中に生ずる4.4MeVの即発ガンマ線に着目し、これを高精度でイメージングすることに初めて成功した。1-10MeVのガンマ線イメージングは先端医療をはじめ、宇宙の元素合成を探る鍵としても期待される。
光の仲間であるガンマ線は、波長が電子・原子のサイズに匹敵するほど短く、波ではなく粒子として振る舞う。特に1-10 MeVのガンマ線は透過力の強さと反応の複雑さゆえ、これを直接「観る」技術は望まれつつも、確立していなかった。たとえば先端医療では、メスをいれることなくガンの根治を促す陽子線治療が注目されているが、照射中に体内の様子(線量分布)を外から見ることは困難。そこで陽子線が体内の元素と反応し、放出するガンマ線を「当てながら観る」ことで治療精度の向上が期待される。また、1-10MeVのガンマ線は励起した様々な原子核(たとえば炭素、酸素)から生ずるため、星の内部や宇宙全体の元素合成を紐解く、重要な鍵が得られると期待される。
今回、研究チームは陽子線と、体内にある炭素の反応で生ずる4.4MeVガンマ線に着目し、高精度のイメージングに成功した。ガンマ線の発生分布は陽子線のエネルギー損失とほぼ正確に一致しており、治療中のオンラインモニタとしての有用性を世界で初めて実証した。今回の研究成果は陽子線治療の高度化に留まらず、宇宙科学の新しい窓の開拓へ向けて大きく貢献するものと期待される。
研究成果は、Scientific Reportsに掲載された。
(詳細は、www.qst.go.jp)