May, 25, 2018, 東京--東京工業大学 物質理工学院 材料系の森川淳子教授、劉芽久哉大学院生らは、スウィンバーン工科大学との国際共同研究の一環として、厚さ30nmの薄膜上に、幅2.5µmの温度センサを製作することに成功した。電子線リソグラフィーとリフトオフ技術を駆使して実現した。
このセンサを用い、毎秒50万ケルビン(5×105 K/s)の高速な温度変化を測定できることを確認した。レーザ光や電子線照射による微小領域での測定が可能であり、マイクロ・ナノスケールの熱伝導計測への応用展開が期待される。
次世代パワーエレクトロニクスなどのデバイス開発における発熱の問題は、依然としてさし迫った課題であり、マイクロ・ナノスケールの熱制御が、フォノンエンジニアリング[用語3] のキーテクノロジーとして注目されている。
従来型の熱計測では、センサの熱容量による応答速度や、フォト・サーマル効果による熱源の測定サイズの限界があることが多く、ナノスケールの熱源や、高速に応答可能な温度計測技術の開発が急務であった。
研究チームは、電子線リソグラフィとリフトオフの手法を用いて、厚さ30 nmの窒化シリコン(Si3N4)ナノ薄膜上に幅2.5µmの金・ニッケル(Au-Ni)接合による起電力型温度センサを作製。直径0.5µm以下のスポットサイズに絞った電子線照射による温度変化を、毎秒5×105 Kの高速応答により捉える測定に成功した。
この技術を用いて、500 nmサイズの温度を計測し、電子線走査による温度マッピングとして実現した。さらに、電子線照射を変調させることにより、試料内にナノスケールの温度変調を生じさせ、その面内への温度波伝播の位相変化を計測することで熱拡散率を求める方法論を検証した。
バイオメディカル分野では、フォト・サーマル効果を利用した癌治療も行われており、これらナノスケールの熱計測技術の今後の応用が期待される。
研究成果はScientific Reportsに掲載された。
(詳細は、www.titech.ac.jp)