April, 17, 2018, Gaithersburg--NISTの研究チームは、レーザ光が微小な原子雲と相互作用するチップを開発した。これは、量子精度で長さなどの重要な量を計測する微小ツールキットとして機能する。設計は、既存技術で量産可能である。
Opticaに発表された研究成果によると、NISTのプロトタイプチップは、780nm波長で赤外光を生成するために使用される。これは、ほかの計測器を校正するための長さ基準として使える精度。NISTのチップは、原子雲と、光波を1平方㎝以下に誘導するための構造を内蔵している。これは、同等の計測精度を持つほかのコンパクトなデバイス体積の1/1万程度である。
「原子のプローブのために光波ガイドチップを使うほかのデバイスと比較して、われわれのチップは計測精度が100倍向上している。われわれのチップは現在、小型外部レーザと光学テーブルに依存しているが、将来設計では、すべてをチップに搭載する」とNIST物理学者、Matt Hummonは話している。
小さなセルに閉じ込めた原子蒸気の量子状態をプローブするために光を使うデバイスは多い。原子は、外部状況に非常に影響を受けやすいので、最高のディテクタになる。原子蒸気と光の相互作用に基づいたデバイスは、時間、長さ、磁場などの量を計測でき、アプリケーションは、ナビゲーション、通信、医学やほかの分野にも及ぶ。そのようなデバイスは一般に、手作業で組み立てる必要がある。
新しいNISTのチップは、斬新な導波路とグレーティング構造を通して外部レーザからの光を伝播し、ビーム径を広げて約1億の原子を、最終的に一つのエネルギー準位から別の準位に変わるまでプローブする。このエネルギー遷移のために原子が吸収するレーザ光の周波数、つまり波長を判定するために、そのシステムはフォトディテクタを使ってレーザチューニングを特定する。チューニングでは、光の半分程度が蒸気セルを通過するようになっている。
デモンストレーションはルビジウム原子ガスを使ったが、チップは、幅広い原子および分子蒸気で機能し、可視光と赤外の一部で特殊波長を生成する。レーザが適切にチューニングされると、元のレーザ光の一部が出力としてスピンオフし、参照基準として利用される。
NISTのチップは、たとえば、長さ計測器の校正に利用できる可能性がある。国際長さ基準は、光の速度をベースにしている、これはその周波数を乗じた波長に等しい。
しかしもっと重要な点は、NISTのグループリーダー、John Kitchingの説明によると、新しいチップが、レーザと原子蒸気セルがともに潜在的に、半導体のように量産可能であることを示している点である。これは、現在の、嵩張るオプティクスと吹きガラス蒸気セルの手作業組立ではなく、シリコン材料と従来のチップ製造技術を使う。この進歩は、多くのNIST計測器、原子時計から磁気センサ、ガス分光計までに適用可能ある。
NISTのチップは14㎜長、9㎜幅である。導波路は、SiNで作られており、幅広い範囲の光周波数に対処する。蒸気セルは、ガラス窓を持ち、微細加工したシリコンである。これは、Kitchingの研究グループが開発した、NISTのチップスケール原子時計や磁気探知器で使われているものと同じである。
新しいデバイスは100秒で、100億分の1誤差精度で周波数を計測する。性能は、別のNIST周波数コムと比較して検証されている。この性能レベルは、非常に小さな物に最適である。ただし、フルスケールのラボ計測器の方が、より高精度である。