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クロロフィルの誘導体が二つ集まり、円偏光発光(CPL)が発現

March, 19, 2018, 東京--首都大学東京・杉浦健一教授、近畿大学・今井喜胤准教授、北里大学・長谷川真士講師の共同研究グループは、植物の光合成において重要な役割を果たすクロロフィルが重なり合う特徴的な構造「スペシャルペア」をモデルにした色素を作成して測定し、円偏光発光(CPL)していることを確認した。
 太陽エネルギーを利用する人工光合成は、次世代のエネルギー問題を解決するための切り札として、大きな注目が寄せられている。その実現のためには植物による光合成の仕組みの精密な解明が不可欠。植物の光合成にはさまざまな生体分子が関与しているが、なかでも、2つのクロロフィル分子が接近した集合体(「スペシャルペア」)の正確な役割の解明が待たれている。この集合体は、対称性が失われた光学活性体と呼ばれる構造を持っている。
 一方、近年、光学活性体が発する円偏光発光(CPL: Circularly Polarized Luminescence)と呼ばれる現象が注目されている。この現象は、高輝度液晶ディスプレイ用偏光光源を始めとして、3次元ディスプレイや光通信、セキュリティ分野などへの応用が期待されている。
 研究では、「スペシャルペア」の光学活性な構造に着目し、それがCPLを示すのではないかと予測して計画した。実際の「スペシャルペア」は弱い相互作用によって重なり合う構造のため、取り扱いが非常に困難。研究グループは、クロロフィルと同じ構造を持つポルフィリンと呼ばれるモデル化合物を連結させ、疑似的な「スペシャルペア」を合成した。このモデル化合物の測定を行い、明瞭なCPLを観察することができた。このことは、天然のクロロフィルの「スペシャルペア」もCPLを発している可能性を示唆するものであり、天然由来の色素を機能性光学材料へ応用することの足掛かりになると研究チームは考えている。さらには、光合成における「スペシャルペア」の正確な役割を解明するきっかけになる可能性がある。
 研究成果は、2018年3月15日に「Chemistry Select」のオンライン版で公開された。
(詳細は、www.tmu.ac.jp)