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アト秒パルスで、原子内殻の電子の運動を観察

March, 8, 2018, Munich--新開発のレーザ技術により、アト秒物理学研究所の物理学者(LMU Munichとマックスプランク量子オプティクス研究所との協働)は、前例のない強度の高エネルギーフォトンのアト秒バーストを生成できるようになった。
 原子内殻の超高速電子運動を光短パルスで観察するためには、パルスは超高速であり、かつ高輝度でなければならない。また、発せられるフォトンは、十分に高エネルギーでなければならない。この特性の組み合わせは、過去15年にわたり、世界中の研究所で探求されてきた。ルートヴィヒ・マクシミリアン大ミュンヘン(LMU)とマックスプランク量子オプティクス研究所(MPQ)とのジョイントベンチャーであるアト秒物理学研究所(LAP)の物理学者は、この目標達成に必要な条件を満たすことに成功した。最新の実験で、研究チームは、アト秒パルスと、原子殻の周りの内殻軌道の1つの電子との非線形相互作用を観察することができた。この文脈では、「非線形」は、相互作用が1個以上のフォトン(この特殊なケースでは2個)に関わることを示している。このブレイクスルーは、アト秒パルスの新しい光源の開発によって可能になった。
 原子内深くの電子の超高速運動を観察するための扉が開かれた。LMU MunichのLAP物理学者が、強いアト秒パルスを生成できる技術を開発した。このパルスを使って、アト秒シャッター速度で電子の動きを止めることで、原子内殻の電子の運動をリアルタイムで追うことができる。
 電子の運動を撮影するために使われた実験手段は、「ポンププローブ」アプローチの利用である。標的原子内の電子は、まずポンプパルス内のフォトンで励起される、これにわずかに遅れてプローブパルスの第二のフォトンが続く。第二フォトンが実質的にポンプフォトンの効果を明らかにする。この手段を実施するために、フォトンは、2つのフォトンが連続して標的に命中するように固く詰まっていなければならない。さらに、これらのフォトンが内部電子殻に到達することがあるなら、極紫外(XUV)の上限のエネルギーを持っていなければならない。このスペクトル領域で、必要なフォトン密度のアト秒パルスの生成に成功した研究グループはこれまでに存在しない。
 この偉業を可能にした技術は、従来のアト秒パルス光源のアップスケールに基づいている。Laszlo Veisz教授のチームが、各々が数個の振動周期のみで構成されている赤外光バーストを放射することができる新しいハイパワーレーザを開発した。ここでは、従来のシステムの場合と比較してパルスあたりに含まれるフォトンが100倍である。今度は、これらのパルスにより、従来のアト秒光源の100倍のフォトンを含むXUV光の分離されたアト秒パルスの生成が可能になる。
 最初の一連の実験で、高エネルギーアト秒パルスはキセノンガスの流れに集中していた。キセノン原子の内殻と相互作用を起こすフォトンが、内殻から電子を放出し、原子をイオン化する。これらのイオンの検出にイオン顕微鏡を使うことにより、研究チームは、アト秒パルスに閉じ込められた原子の内殻軌道電子と相互作用する2つのフォトンを初めて観察することができた。以前のアト秒実験では、内殻電子と単一XUVフォトンとの相互作用の観察にとどまっていた。
 「2つのXUVアト秒パルスと相互作用する内殻電子の実験は、アト秒物理学の至高の目標と言われることが多かった。2つのXUVパルスで、われわれは、その動力学をかき乱すことなく内殻原子の電子の運動を撮影することができる」と研究リーダー、Dr. Boris Berguesは話している。これは、単一アト秒XUVフォトンによる励起に関わるアト秒実験の大きな前進である。そのような実験では、結果として得られる状態は、より長い赤外パルスで「撮像」された。そのパルス自体が、続いて起こる電子の運動に大きな影響を与える。
 「原子の内殻電子の動力学は、特別な関心事である。これは、互いに相互作用する多くの電子間の複雑な相互作用から得られる結果だからである。このような相互作用から得られる詳細な動力学は、多くの問題を提起する。今後、われわれは新しいアト秒光源を使って、それに実験的に対処できる」とBerguesは説明している。
 次の段階では、研究チームは、相互作用を時間分解する実験を計画している。これは、高強度アト秒パルスをポンプパルスとプローブパルスに分離することで行う。
(詳細は、www.mpq.mpg.de)