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SEAS研究者、メタレンズと人工筋肉を結合

March, 1, 2018, Cambridge--Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences (SEAS)の研究チームは、人の眼からヒントを得て、適応型メタレンズを開発した。これは、本質的にフラットで、電気制御できる人工の眼である。
 アダプティブ(適応型)メタレンズは、画像がぼやける主要な原因の3つを同時に制御する、焦点、非点収差、画像のズレの3つである。研究成果は、Science Advancesに発表された。
 「この研究は、人工筋肉におけるブレイクスルーとメタレンズ技術を組み合わせて、チューナブルメタレンズを実現する。これは、人の眼のように、焦点をリアルタイムで変えることができる」と論文の筆頭著者、SEASの院生、Alan Sheは説明している。
 「人の眼が自然に補正できない非点収差や画像のズレなど、収差の動的補正能力実現でわれわれは大きく前進した」。
 「これは、内蔵光学ズームやオートフォーカスの実行可能性を実証している。アプリケーションの幅は広く、携帯電話カメラ、メガネ、AR/VRハードウエアが含まれる。また、将来の光学顕微鏡、完全に電子的に動作し多くの収差を同時補正できる顕微鏡の実現可能性を示している」と論文のシニアオーサ、Federico Capassoはコメントしている。
 人工の眼を作るには、研究チームはまずメタレンズの規模を拡大する必要があった。
 「ナノ構造は非常に小さいので、各レンズの情報密度は信じられないほど高い。100-µmサイズのレンズからセンチメートルサイズのレンズに移行すると、レンズを記述するために必要とされる情報は10000倍に増える。レンズを拡大しようとするときはいつでも、設計のファイルサイズだけで、ギガバイトあるいはテラバイトに膨らむ」と同氏は指摘する。
 この問題を解決するために研究チームは、ファイルサイズを縮小する新しいアルゴリズムを開発した。これにより、集積回路製造に現在用いられている技術に適合させてレンズを造ることができる。最近Optrics Expressに発表された論文では、研究チームは、直径数センチメートル以上のメタレンズの設計と製造を実証した。
 「この研究は、2つの産業、半導体製造とレンズ製造を統合する可能性を示している。コンピュータチップを作製するための同じ技術を使ってメタサーフェスベースの光学コンポーネント、つまりレンズを製造できる」とCapassoは話している。
 次に研究チームは、集光能力に妥協することなく、大型メタレンズを人工筋肉に取り付ける必要があった。人の眼は、レンズを縮小、拡大する毛様筋でレンズは囲まれている。これによって、形状を変え焦点距離を調整する。研究チームは、人工筋肉として知られる誘電エラストマアクチュエータのエンジニアリングアプリケーション分野の先駆者、SEASのDavid Clarkeと協力した。
 研究チームは、低損失の薄い透明誘電エラストマを選択してレンズに取付た。つまり、光がほとんど散乱なしに材料を透過する。そのためには、レンズを柔らかな表面に移行し取り付けるプラットフォームの開発が必要だった。
「エラストマは、ほぼ全面的に半導体とは違っているので、課題は、両者を結合して新しい多機能デバイスを造る方法。特に、製造ルートの工夫の仕方であった」とClarkeは言う。
 エラストマは、電圧印加により制御される。それが伸びると、レンズ表面のナノピラーの位置が変わる。メタレンズは、その隣接部分と構造全体の移動との関係で両方のピラー位置を制御することで調整できる。研究チームは、レンズが焦点を合わせ、非点収差によって生ずる収差を同時に制御し、画像のズレに対して機能を発揮することも実証した。
 また、レンズと筋肉は、わずか30µm厚である。
 「多重コンポーネントを持つ全ての光学系は、カメラから顕微鏡、望遠鏡まで、コンポーネントにわずかなミスアライメント、機械的応力がある。これはそれらが作製される方法と現状の環境によるものであり、これは常に小さな非点収差、他の収差の原因になるが、適応型光学素子により補正可能である。適応型メタレンズはフラットであるので、そのような収差を補正し、多様な光学機能を単一の制御面に統合できる」と同氏は説明している。
 研究チームの次の目標は、レンズの機能向上、制御に必要な電圧の低減である。