February, 20, 2018, つくば--産業技術総合研究所(産総研)機能化学研究部門スマート材料グループ 秋山陽久主任研究員は、接着と脱着を制御でき、繰り返し使える光硬化性接着剤を開発した。
この接着剤は、枝分れした構造の糖アルコールと、光に応答してお互いに結合する複数のアントラセンを組み合わせた透明な液状物質を用いており、光照射による硬化と加熱による液化を繰り返す。この接着剤の利用で、接着のやり直しや接着後の材料の再利用などが可能になり、新しい複合材料プロセスの実現が期待される。
この技術の詳細は、nano tech 2018 第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議で発表された。
今回、材料を無色透明化するために、可視光領域でほとんど光を吸収しないアントラセンを光応答性部位として用いた。アントラセンは、光を吸収して、分子間で2量化して硬化し、加熱によって解離するが、アントラセン自体は結晶(固体)である。アントラセン同士の分子配列を阻害して結晶化を防ぎ、室温で液体状態が安定となる分子構造を設計した。
この分子は、複数のアントラセンをエステル結合を介して糖アルコール(D-ソルビトールなど)に導入した構造で、入手しやすい原料から簡単に合成できる。合成した化合物は、室温で液体であり基材へ容易に塗布できた。塗布後の膜に、吸収端の波長にあたる400~420 nmの光を照射すると、分子間でアントラセン基の2量化による架橋反応が起こって硬化し、着色も生じないで透明の硬化膜となった。
液体状態のこの化合物を、ガラス基板に塗布して挟み込み、400~420 nmの光で硬化させるとガラス基板を接着できた。このときのせん断接着強度は、これまでのアゾベンゼン系の約5倍で、ガラス基板の破断強度に達した(>5 MPa)。接着状態は、100 ℃でも安定に保たれたが、150 ℃以上に加熱すると、架橋部分の熱解離により液化し、容易に脱着できた。液体状態に戻った化合物に再び光照射を行うと再接着も可能であり、この光硬化(接着)、熱液化(脱着)のプロセスは、少なくとも5回以上繰り返すことができた。
(詳細は、www.aist.go.jp)