January, 30, 2018, 大阪--大阪大学レーザー科学研究所の千徳靖彦教授と、同先導的学際研究機構、同大学院工学研究科、エコールポリテクニーク(フランス)、欧州XFEL(ドイツ)、応用物理学研究所(ロシア)、サンディア国立研究所(米国)、原子力・代替エネルギー庁(フランス)との国際共同研究チームは、超高強度レーザによるイオン加速において、加速電場の励起時に非常に強い自己生成磁場が発生し、磁場がイオン加速に影響を与えることを明らかにした。
強磁場発生のメカニズムを理論的に明らかにするとともに、10万テスラ級磁場の兆候を実験で捉えることに世界で初めて成功した。研究成果は将来医療応用等が期待される100メガ電子ボルトを超えるエネルギーを持つイオン源の開発に向けて、必要なレーザ条件に対して指針を与えるものである。
高強度レーザを厚さ数ミクロンという極薄金属板に照射すると、金属板に付着する不純物の中に存在するプロトン(水素イオン)が、他のイオンよりも優位に加速され飛び出す。これはプロトンの電荷と質量の比が、他のイオン種よりも大きいためであり、このような加速をレーザ駆動イオン加速と言う。現在、プロトンのエネルギーは数10メガ電子ボルトを安定的に達成してい.。癌治療などの医療応用や非破壊検査といった応用に利用できるとされる100メガ電子ボルトのエネルギーに、あと少しで到達できるとされ世界各国で活発に研究が行われている。
とは言え、レーザのエネルギーを上げても、プロトンのエネルギーが50メガ電子ボルト程度で飽和してしまい、その理由がわからず研究は足踏み状態にあった。今回の研究成果は「なぜレーザ加速によるプロトンエネルギーが飽和してしまうのか」という疑問に答えを出すとともに、今後のレーザ駆動イオン加速の効率を上げるための重要な知見を提供し、100メガ電子ボルト以上のプロトンエネルギーを達成するための指針を与えるものである。この研究成果により、今後、レーザ駆動イオン加速の研究が益々活発になるものと期待される。
研究成果は、NatureCommunications誌に掲載された。
(詳細は、http://www.osaka-u.ac.jp)