December, 4, 2017, Munich--身体の重要プロセスは細胞内および細胞周辺のカルシウム濃度によってコントロールされている。ミュンヘン工科大学(TUM)とヘルムホルツ研究センターミュンヘン(Helmholtz Zentrum München)の研究チームは、生きた動物のカルシウムを可視化できる初のセンサモジュールを開発した。これは光音響学として知られる放射線フリーのイメージング技術の助けを借りている。この方法は、細胞を遺伝子操作する必要がなく、放射線露光もともなわない。
カルシウムは、身体の重要なメッセンジャである。例えば神経細胞では、カルシウムイオンが、信号が他の神経細胞にリレーされるかどうかを決定する。また、筋肉が収縮するか弛緩するかは筋肉細胞のカルシウム濃度に依存する。これは人の身体のほとんどの生きた筋肉、心臓でも真である。
「カルシウムは心臓や脳のような重要な器官でそのように重要な役割を果たすので、生組織の深部でカルシウム濃度がどのように変化するかを観察でき、このような方法でわれわれの病気のプロセスの理解を進めることは興味深い。われわれのセンサモジュールはこの方向の小さな最初の一歩である」とTUMの分子イメージング教授、Helmholtz Zentrum Münchenの研究グループリーダー、Gil Gregor Westmeyerは話している。研究では、研究チームは、生きたゼブラフィッシュ胚の心臓組織と脳で、すでにその分子をテストした。
そのセンサは、比較的新しい非侵襲的な方法、光音響学として知られるイメージング法を使って計測できる。この方法は、生きた動物での利用に適している。また、今後人でも使える。方法は、超音波技術に基づいており、これは人には無害であり、放射線は使わない。レーザパルスが組織の光吸収センサ分子を加熱する。これによって分子が少しの間拡張し、その結果、超音波信号が生成される。その信号は、次に超音波ディテクタで検出され、3D画像に変換される。
光は組織を通過するにしたがい、散乱する。このため、光学顕微鏡の画像は1mm以下の深度でぼやける。これは、光音響学の別の利点を際立たせている。超音波は、散乱が極めて少ないので、数センチの深さでも鮮明な画像を生成する。これは、脳の検査にとって特に有用である、既存の方法は脳表下数㎜しか浸透しないからである。しかし脳は様々な機能領域をもつ複雑な3D構造であり、表面はその小さな一部をなすに過ぎない。したがって研究者は新しいセンサを使って生きた組織内部深くでカルシウムの変化を計測する。研究チームはすでにゼブラフィッシュ胚の脳で結果を出している。
加えて、研究チームは、センサモジュールが生きた細胞に簡単に取り込まれるように設計した。さらに、それは組織には無害であり、色の変化に基づいて機能する。センサがカルシウムと結合するとすぐに、その色が変わり、それが次に光誘導光音響信号を変える。
現在利用されている、カルシウム変化を可視化する多くのイメージング法は、細胞を遺伝子操作する必要がある。例えば、細胞でカルシウム濃度が変化すると蛍光を発するようにプログラムされている。この問題は、言うまでもなく、人にそのような遺伝子的介入を行えないことである。
新しいセンサはこの制約を克服する。将来的に、研究チームは分子の特性をさらに改善する計画である、これによりセンサ信号はもっと深い組織層で計測できるようになる。この目的のために研究チームは、人の目が感知できないようなもっと長波長の光を吸収する分子の変化形を作らなければならない。
(詳細は、www.tum.de)