July, 19, 2017, 東京--JAXAは、地上からの遠隔操作により宇宙空間を移動して撮影するJAXA初の移動型カメラ「JEM自律移動型船内カメラ(Int-Ball」の映像を初公開した。
Int-Ballは2017年6月4日に打ち上げられた米国のドラゴン補給船運用11号機により、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に運ばれ、現在、初期検証を行っている。
JAXAは、Int-Ballの特徴として以下の3点を挙げている。
・筑波宇宙センター(TKSC)からの遠隔操作を受け、自律的に空間を移動し、静止画と動画の撮影を行うことができる。
・撮影した映像は、リアルタイムで地上の管制官や研究者が確認し、宇宙飛行士にフィードバックすることができる。
・既存のドローン技術を採用し、かつ外装(筐体)と内部構造をオール3Dプリントで製造した。
3Dプリンタの利用については、JAXA第一宇宙技術部門の堀秀輔主任開発員が「宇宙開発における3D プリンタの活用取組み」で、詳細に紹介している。以下は、その概要。
堀氏は、まず「3D 金属積層造形技術(AM: Additive Manufacturingは,特に少量多品種生産を特徴とする航空宇宙産業において,ニーズへの素早い対応,低コスト化,高付加価値化等の面で,ものづくりを革新する技術」との認識を示し、「欧米諸国が鎬を削る中,わが国の産業が今後のグローバル化の中で競争力を持続していくためにも,製造装置開発及び実用化の両面において世界を上回る技術を速やかに習得し,新たな産業構造への対応を図ることが不可欠である」と説明している。
「航空宇宙分野における3Dプリンタへの取組みの必要性」のセクションでは、電子ビーム溶融法(EBM: Electron Beam Melting)や選択的レーザ溶融法(SLM: Selective Laser Melting)による汎用 3D プリンタの登場で、航空宇宙産業のものづくりの変革として,3つのポイントを挙げている。
(1)多数部品から成る複雑コンポーネントを一体物とすることによる少量多品種生産の短納期化・低コスト化
(2)従来は製造できなかった形状による格段の性能向上・軽量化
(3)CAD からプリントするため金型等の設備が不要になり,特定メーカへの依存からの脱却(参入障壁の低下)
これらから導かれる結論として堀氏は、「航空宇宙産業が今後グローバルな競争の中で競争力を持続していくためには,3D プリンタ技術を速やかに習得し,新たな産業構造への対応を図ることが不可欠である」としている。
(詳細は、www.jaxa.jp)