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ガンマ線の光渦を発生させる手法を発見

July, 14, 2017, つくば--産業技術総合研究所(産総研)分析計測標準研究部門放射線イメージング計測研究グループ 平義隆研究員、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子科学研究所(分子研)加藤政博教授、量子科学技術研究開発機構(量研)東海量子ビーム応用研究センター 早川岳人上席研究員らは、円偏光高強度レーザと高エネルギーの電子の衝突(レーザコンプトン散乱)によって、渦状の形状を持つガンマ線が生成されることを理論計算により見出した。
 近年、レーザ技術の進展によって、渦状の形状を持つ特異な光、光渦を生成できるようになってきた。光渦は、分子や材料に照射した場合に、通常の光ではできない「捻る」などの操作ができるといった特徴がある。生成できる光渦の波長(エネルギー)範囲は拡がってきているが、メガ電子ボルトのエネルギー領域のガンマ線の光渦(ガンマ線渦)はまだ生成されていない。ガンマ線渦が生成できれば、原子や原子核との新奇な相互作用を通じて、同位体分析や非破壊検査において新しい産業技術が実現される可能性がある。
 今回、理論計算による検討の結果、円偏光高強度レーザと高エネルギーの電子とをコンプトン散乱させた時に、高強度レーザがもたらす強い電磁場における電子の散乱により高エネルギーのガンマ線渦が生成されることを見出した。これまで、光渦レーザと高エネルギー電子のコンプトン散乱によって高エネルギーガンマ線渦を発生する理論的方法が提案されていたが、今回発見した手法では光渦レーザを用いなくてもガンマ線渦を発生できる。円偏光レーザは一般的なレーザ装置を用いて安定かつ高強度に発生できることから、円偏光高強度レーザを用いたレーザコンプトン散乱が、ガンマ線渦を生成するための実用的かつ有望な手法となることがわかった。
 研究の詳細は、Scientific Reportsにオンライン掲載された。
(詳細は、www.aist.go.jp)