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岡山大学、赤外分光計測の飛躍的な感度向上に成功

June, 27, 2017, 岡山--岡山大学大学院自然科学研究科(工)の石川篤助教、鶴田健二教授らと、理化学研究所の田中拓男主任研究員(フォトン操作機能研究チームリーダー)の共同研究グループは、“非対称メタマテリアル”と呼ばれる人工光学材料を開発した。その表面に吸着した有機分子を、数1,000個レベル(=ゼプトモルレベル)の極めて高い感度で赤外分光計測できる技術を新たに開発した。
 研究成果はScientific Reportsに掲載された。
 従来の赤外分光計測では、ノイズの原因となる明るい背景光の中から、試料が光を吸収する際に発生するわずかな光強度の低下を検出していた。そのため、極微量試料からの弱い信号は背景光に埋もれてしまい、本質的に高感度検出が困難だった。研究グループはこれまでに、光の性質を自在に制御できる人工光学材料“メタマテリアル”を用いて邪魔な背景光を抑制することで、赤外分光計測の感度が向上できることを発見し、数100万個(=アトモルレベル)の有機分子の高感度検出を実証してきた。
 今回、研究グループが新たに開発した高感度化技術は、光の揺れる方向を表す偏光という性質を“非対称メタマテリアル”によって上手く制御し、分子からの光信号と背景光とを区別することで、光信号のみを高いコントラストで検出する技術。偏光を使って光の明暗を精密に制御する同様の技術は、液晶テレビなどにも広く使われているが、研究グループはこれを赤外分光計測に応用することで、従来法に比べ3桁の飛躍的な感度向上に成功した。今後、メタマテリアル構造を最適化して背景光をさらに抑えることで、検出できる分子の数が10~100個(=サブゼプトモルレベル)といった超高感度化も期待される。
 現在、赤外分光計測技術は、温室効果ガスや有害ガスを計測する環境モニタリングや呼気中のガス成分を分析し特定疾患との因果関係を調べる呼気診断に応用が進んでいる。この研究成果によって、これらの分光分析技術の感度向上が見込まれ、環境モニタリングや呼気診断技術に貢献することが期待される。
(詳細は、www.okayama-u.ac.jp)