May, 23, 2017, Turich--チューリッヒ工科大学(ETH)の研究グループは、デュアル周波数コムを以前よりも著しく簡単に安価に作製する方法を開発した。
量子エレクトロニクス研究所のUrsula KellerをリーダーとするETHの研究グループは、今後の分光分析が簡素に、高速になる見込みのある方法を実証した。研究グループが開発したのは、いわゆるデュアル周波数コムを作製する新しい技術で、科学誌Scienceに研究成果が報告されている。
原理的に、周波数コムを使うと多数の周波数で物質を同時にプローブすることができる、通常の分光学ではレーザ光の一部を調べるべき材料に送って透過させ、他方は参照として使う。レーザの周波数を着実に掃引し、同時に物質によるレーザ光の吸収が、2つのフォトディテクタを使って参照ビームとの関連で計測される。この周波数スキャンで、物質特有のスペクトルグラムが得られる。しかし、この手続きは直接に周波数コムに適用することはできない。コムに同時に含まれる異なる周波数は、吸収のされかたが違うからである。フォトディテクタは、それらすべてを区別することはできない。そのためには、光の重畳振動を個別に直接記録する必要があるが、それは数100THzの周波数では不可能である。
Kellerのグループが開発した技術は、高速で、直接計測できないこれらの振動を、通常のエレクトロニクスで簡単に検出可能な、非常に遅い振動に変換する。この手続きは、ピアノ調律師が用いるのと同じような方法を利用する。同じ音色の異なるコードで等しいチューニングを得るには、ピアノ調律師は2つの異なる周波数の重畳によって生ずるビートを利用する。ビートは、2つの重畳周波数の差に対応する速さで振動する。
ETHの研究グループは、極めて似通った方法を利用する。研究グループは、第2の周波数コムを作り、その周波数は最初の周波数とはわずかに異なる間隔を持つ。これによって周波数ペアができ、その各々がわずかに異なるビート周波数になる。これらのビート周波数は、MHz領域となり、フォトディテクタを用いて簡単に計測することができる。
この種のデュアルコム分光は数年前から存在したが、ETHが開発した技術により、それが著しく簡素で安価になる、と論文の筆頭著者、Sandro Link, PhD学生は説明している。「本当に新しい点は、2つの周波数コムを2つのレーザではなく、1つのレーザで作り出す点にある」。ここで用いた方法は、レーザの間に挿入した複屈折結晶にある。こうすることで、光はその偏光に応じてわずかに異なる距離を伝搬する。その結果、2つのレーザビームが異なる周波数間隔で周波数コムを生成する。2つの周波数コムは、同じレーザによって作られるので、たがいに対してそれらを安定化することが不要になる。