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強力短パルス光で磁気層にデータ記録

January, 20, 2017, Sarasota--強力な短パルス光で、コバルトイオンドープのイットリウム鉄ガーネット(YIG)磁気層にデータを記録することができる。これは、オランダのラドバウド大学(Radboud University)とポーランドのビャウィストク大学(Bialystok University)の研究者が発見した。新しいメカニズムは既存の代替技術を凌駕し、前例のない低熱負荷でかつてない高速の書き込みと読み磁気記録ができる。研究成果はNatureに発表。
 信頼性が高く、安価で迅速なデータ記録は21世紀の経済にとっては、前世期の石油と同じように極めて重要である。磁気記録は、その点では非常に性能がよいが、データセンターは、クラウドストレージの需要激増により、どんどん過熱している。それらのプロセッサを冷却するために膨大なエネルギーが必要とされている。磁気記録の最新イノベーションである熱補助型磁気記録(HAMR)は、この問題を解決することはないと見られている。それどころか、それはレーザパルスの熱を使って記録速度を加速する。このため、発熱せず電磁気を必要としない超高速磁気記録が、現在の基礎磁気研究および応用磁気研究の至高の目標となっている。
 ラドバウド大学の研究チームは、10年以上前から光パルスエネルギーを使って磁石を操作する方法の実験を行ってきた。研究チームは、2007年に研究成果を発表している。
 研究チームの最初の研究成果の問題は、記録のメカニズムがレーザ誘導加熱に依存することだった。これは、その温度を超えると磁気秩序が壊れる、いわゆるキューリー温度にすぐに到達する。加熱による、記録、磁気秩序の部分崩壊は、潜在的応用を著しく妨げるものであった。加熱は、記録媒体の熱安定性に悪い影響を与え、冷却時間は繰り返し周波数を制限し、熱拡散のために記録密度を制限する。

スピン軌道相互作用
加熱問題に取り組むためには、光吸収の少ない媒体が必要になる。自由電子が多い金属では、光の吸収、したがって材料の加熱は避けられない。つまり、過熱を減らすためには、誘電体材料を使う必要がある。この研究のために研究チームは、イットリウム鉄ガーネット(YIG)を選択した。YIGは、基礎研究と応用研究におけるモデル磁性誘電体の1つである。通常のYIGに光で情報を記録することはできない。しかし、光励起に対するそれの感度を高めるために、研究チームは、それにコバルトイオンをドープした。コバルトイオンは、磁気モーメントと電子の軌道運動との強力な結合で知られている(いわゆる、スピン軌道相互作用)。光は、イオンの中の電子の軌道運動を効果的に変え、磁気に影響を及ぼすことができる。実験は、研究チームの予測に完全に一致した。研究チームは、コバルト置換ガーネット膜において、単一直線偏向フェムト秒レーザパルスが異なる状態間でスピンスイッチングを促進することを見出した。
「レーザパルスの偏向を変えることで、われわれはガーネットの正味の磁化を確定的に操作し、0と1磁気ビットを思い通りに書き込む。このメカニズムは、既存の代替技術を凌駕する。これまでにない高速、2ピコ秒(ps)以下の磁気書き込み、読み出し記録が可能であり、熱負荷はこれまでになく低い」と研究チームは、説明している。
 ガーネット膜で磁気のスイッチングへの光の利用は、恐らくパーソナルコンピュータには適用できない。ラドバウド大学の物理学者、Alexey Kimelによると、GoogleやFacebookなどの巨大データウエアハウスには興味深いオプションになる。別の用途としては、極低温でのデータ記録が可能になる。「超伝導エレクトロニクスや量子コンピュータは、10K(-263℃)以下で記録できる高速のメモリシステムが欠如している。今まで、これは超伝導コンピューティングの深刻な障害だった」と同氏はコメントしている。