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高記録容量光ディスクを目指した高速光記録材料を開発

December, 1, 2016, つくば--産業技術総合研究所(産総研)無機機能材料研究部門機能調和材料グループ 神哲郎研究グループ長、鎌田賢司上級主任研究員は、ダイキン工業株式会社(ダイキン工業)と共同で、大幅な多層化と高速な記録が可能な長期間保存用光ディスク向け記録材料を開発した。
 この技術では、多段階多光子吸収とホログラム技術を用いて、時間幅8ナノ秒(ns)のレーザパルスを1回照射するだけで記録ピットを形成でき、従来の光ディスクの問題であった記録速度を大幅に向上できる。この記録材料では1枚のディスクで最大10テラバイト(TB)の記録容量が可能になると見込まれ、長期保存記録に用いることで、ハードディスクや磁気テープなどの現行記録媒体で必要な空調や定期的なデータの移行が不要になり、約4割の消費電力削減と二酸化炭素排出量低減への貢献が期待される。
 技術は、実効的に二光子吸収の強度を増加させる多段階多光子吸収を用いて高感度化し、あらかじめ記録材料にホログラムを形成しておくことで記録信号の再生のコントラストを高めて、光記録形成に必要な照射時間を短くして、高速な記録を実現した。従来の技術ではピコ秒、フェムト秒レーザなど、ごく短い時間幅を持つレーザパルスを何回も連続照射していたが、今回開発した技術ではそれらよりも長い時間幅のナノ秒パルスを1回だけ照射する。ピコ秒、フェムト秒レーザパルスでは二光子吸収だけが起こり、その後に発生する熱量が限られていたため、何回も繰り返しての照射が必要となり照射時間が長くなっていた。一方、ナノ秒パルスでは二光子吸収の後に一光子吸収である励起状態吸収が起こる多段階多光子吸収が生じる。励起状態吸収と熱を発生する緩和とが繰り返し起こるので実効的な二光子吸収の強度が増加し、発熱量は桁違いに増加する。今回の技術では記録材料中にあらかじめ再生用のレーザ光を高効率で反射するようにホログラムが形成されており、多段階多光子吸収で発生する熱によりこのホログラムを乱すことで記録が形成される。ホログラムはわずかに乱されただけでも反射光の強度が大きく低下するので高コントラストの再生ができ、記録に必要な時間をさらに短縮できる。この結果、8ナノ秒パルスの1回照射でも光記録を形成でき、これは100 Mbpsの書き込み速度(Blu-rayディスクの記録速度の3.5倍)に相当する高速な記録速度である。
 この原理に基づき、Blu-rayに用いられる波長405 nmのレーザで記録と再生を行った。記録材料にあらかじめホログラムを作成してあるので再生光を照射すると強い反射光が得られるが、8nsのレーザパルス照射により記録を形成すると反射光の強度が低下した。材料中の観測する位置を変えながら反射光を測定すると記録が形成された場所では反射光の強度が低下し、反射光強度の差として、実用的なレベルのシグナル-ノイズ比(15dB)で記録を再生できた。
 形成された記録ピットのサイズは深さ方向で2.7µmであり、100µm厚の記録層では20層の多層化が可能。面内方向のサイズは0.7µmで現状ではDVD程度の記録密度であるが、もしBlu-rayディスクのレベルまで記録密度を向上できれば100µm厚の記録層で50層1.25TBの記録が可能となる。さらに今回開発した記録材料の透過特性から800µm厚の記録層が可能と考えられ、400層、10TBの保管記録向け超多層光ディスク記録(現行Blu-ray 400枚分が1枚)が可能になると見込まれる。
この技術の詳細は、2016年08月30日(日本時間)に論文誌Japanese Journal of Applied Physicsにオンライン掲載された。