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世界最薄グラフェンベースのフォトディテクタを開発

November, 18, 2016, Daejeon--基礎科学研究所(IBS)内の集積ナノ構造物理学センタは、世界最薄フォトディテクタを開発した。厚さわずか13nmで、現在の標準的なシリコンダイオードの1/10のサイズのデバイスはIoT、スマート機器、ウェアラブルエレクトロニクス、光電機器で使用できる。この2D技術は、グラフェンに挟み込まれた二硫化モリブデン(MoS2)を使用している。
 グラフェンは、半導体のように動作しないので、エレクトロニクス産業におけるアプリケーションは限られている。グラフェンの用途を拡大するためにIBSの研究者は、2つのグラフェンシートの間に2D半導体MoS2層を挟み、それをシリコン基板上に置いた。当初、電流生成には薄すぎると考えられていたが、予想とは違い電流が生成された。「MoS2単層デバイスは薄すぎて従来のp-nジャンクションはできない。正電荷(p)と負電荷(n)が離れていて内部電界が生ずるからである。しかし、それに光照射すると、高い光電流が観察された。それは古典的なp-nジャンクションではありえないことであり、さらに研究を続けることになった」と論文の筆頭著者、Yu Woo Jong氏はコメントしている。
 研究チームは、MoS2の単層と7層のデバイスを比較し、フォトディテクタとしての振る舞いをテストした。つまり光をどの程度電流に変換できるかのテストである。分かったことは、単層MoS2のデバイスは7層デバイスよりも光吸収は少ないが、光応答性は高いということである。「通常、光電流は光吸収に比例する、つまりデバイスがより多くの光を吸収すれば、より多くの電気が生成される。しかし、今回は、単層MoS2デバイスは7層MoS2と比べて光吸収は少ないが、生成する光電流は7倍である」とYu氏は説明している。
 薄いデバイスの方が性能がよいのはなぜか。光電流生成は古典的な電磁気学ではなく、量子物理学で説明できることは分かっていた。光がデバイスを直撃すると、MoS2層からの電子に励起状態に飛び込むものがあり、デバイスの中のそのフローが電気を生成する。しかしMoS2とグラフェン間の境界を通るためには、電子はエネルギー障壁を飛び越える必要がある(量子トネリングによる)、この点が単層MoS2が厚いデバイスよりも有利な点である。
 単層は薄くて周辺環境の影響を受けやすい。底層SiO2のエネルギー障壁が高くなり、一方トップの空気がそれを減らすので、単層デバイスの電子はMoS2層から上のグラフェン(GrT)へのトネリングの可能性が高くなる。GrT/MoS2ジャンクションのエネルギー障壁は、GrB/MoS2ジャンクションと比べて低いので、励起電子はGrT層に優先的に移動し電流が生ずる。逆に、多層MoS2デバイスでは、GrT/MoS2 と GrB/MoS2間のエネルギー障壁が対称的であるので、電子がどちらかの側へ移行する確率は同じであり、したがって生成電流は減る。
 実際に、光がデバイスによって吸収されMoS2電子が励起状態に飛び上がると、後にホールが残る。ホールは正の可動電荷として振る舞うが、本質的には電子がなくなって残された場所である。電子は、十分なエネルギーを吸収してより高いエネルギー状態へ飛び上がったからである。厚いデバイスのもう1つの問題は、グラフェンとMoS2間のジャンクションを通る電子とホールの移動速度が遅すぎることである、これはMoS2層内で不要な再結合につながる。
 こうした理由から、薄いデバイスによるフォトン吸収は最大65%であり、これは電流生成に利用できる。一方、同じ計測で、7層MoS2ではわずか7%である。
「デバイスはトランスペアレント、フレキシブルであり、現行の3Dシリコン半導体よりも消費電力が少ない。今後の研究が成功すれば、2D光電子デバイスの開発が促進される」と同教授は説明している。