November, 15, 2016, Munich--レーザ物理学者が初めて原子内部の出来事をゼプト秒精度で記録した。
光が原子内の電子を直撃すると、電子の状態は想像を絶する速さで変化する。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(LMU)とマックスプランク量子オプティクス(MPQ)の研究グループは、そのような現象、光励起後にヘリウム原子から電子が出る、つまり光電離を初めてゼプト秒(=10の-21乗秒)の精度で計測した。これは光電離のタイムスケールの初の絶対計測であり、達成された精度は光と物質の相互作用の直接計測では前例がない。
フォトンがヘリウム原子の2つの電子と相互作用すると、極短時間尺度で変化が起こるだけでなく、量子力学的作用が始まる。その法則は、フォトンの全エネルギーが電子の一方に吸収されるか、エネルギーが両方に分布されるかのいずれかを決定する。エネルギー移転のモードにかかわらず、1個の電子がヘリウム原子から放出される。このプロセスは光電子放出、つまりアルバート・アインシュタインが前世紀の初めに発見した光電効果である。何が起こるかを観察するために、超高速シャッタ速度のカメラが必要になる。プロセス全体、フォトンが電子と相互作用するところから電子の1つが原子から放出される瞬間までのプロセスが、5~15アト秒(as=10の‐18乗秒)かかることは物理学者が最近解明した。
改善された計測法を用いてミュンヒェンの物理学グループは、850ゼプト秒の時間尺度で起こる現象を正確に捉えることができる。研究グループは、アト秒長の極紫外(XUV)光パルスをヘリウム原子に照射して電子を励起する。同時に第2の赤外レーザパルスを同じ目標に照射する、これは約4 fs継続する。放出された電子は、XUV光による励起で原子から出るとすぐに赤外レーザパルスで検出された。検出時のこのパルスの振動電磁場の正確な状態に依存して、電子は加速または減速された。この速度変化を計測することで研究グループは光電子放出の持続をゼプト秒精度で立証することができた。加えて、研究チームは初めて、入力フォトンのエネルギーがどのように、粒子の1つが放出する前の最後の数アト秒でヘリウム原子の2つの電子間で量子力学的に分布するかを究明することができた。
研究チームは、実験のゼプト秒精度をTU Wien理論物理学研究所の同僚による理論予測と関連付けることができた。その2つの電子でヘリウムは、特性が量子理論から完全に計算できる最も複雑な系となる。これは理論と実験とを一致させることになる。「われわれは、この計測からエンタングルした電子と電離したヘリウムのパレント原子の完璧な波動力学的記述を得ることができる」とLMUの実験物理学チェア、Martin Schultze氏はコメントしている。