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ライトシート顕微鏡、自動的に画像品質最適化

November, 9, 2016, Ashburn/Dresden--マックスプランク分子細胞生物学・遺伝学研究所(CBG)の研究チームは、大きな生命体の適応ライブイメージング用にソフトウエアとハードウエアの組み合わせを開発している。
 ライトシート顕微鏡は、生命体全体の発展や機能のイメージングにとって最も強力な方法の1つである。しかしこうした顕微鏡で高解像度画像を得るには、イメージング中の手動調整が必要になる。マックスプランク分子細胞生物学・遺伝学研究所の研究者は、Janelia Research Campus(HHMI)の研究者とともに、新しいタイプのライトシート顕微鏡を開発した。これは、大型生体試料の難しい動的光学条件に適応することで自動駆動することができる。この新しいスマート顕微鏡は、新しいハードウエア設計とスマート「AutoPilot」システムを統合している。同システムは、画像を分析して自動的に顕微鏡を調整し最適化することができる。この構成により、発生中の胚全体の長期的適応イメージングが初めて可能になり、ライトシート顕微鏡の解像度が最大5倍向上することになる。
 顕微鏡の長年の目標は、生きたサンプルの内部深くの画像の鮮明度向上である。ライトシート顕微鏡の場合、調べるサンプルの観察方向に垂直にレーザが照射される。これは、サンプル内の薄い層だけを照射する光ディスクを作る。この方法では、レーザは顕微鏡によって観察される平面内の色素分子だけを励起する。他の層からの散乱光は画像品質を損なうので、大部分は回避される。
 ライトシート顕微鏡では、これがイメージングとライトシート照射面との注意深いアライメントの完璧な維持を必要とする。これらの面の不整合は、様々な位置と時間の経過で生きた組織の光学的多様性から起こる。こうした課題への取り組みは、組織の発達や形態形成の背後にある生物学を解釈するために必要な高解像度画像の取得にとって極めて重要である。「これまで、研究者は顕微鏡に向かって手動で調整しなければならなかったが、われわれのシステムはこれをなくした。自律走行車のように顕微鏡は自律的に動作する」と論文の筆頭著者、Loïc Royerは説明している。このスマートな自律的顕微鏡は、試料全体でライトシートと検出面の空間的関係をリアルタイムで解析、最適化できる。
 研究チームは、ゼブラフィッシュの発達とハエの胚を20時間以上イメージングすることでそのスマート顕微鏡の性能を実証した。また、幼虫のゼブラフィッシュで全脳機能適応イメージングも行い、「考える」魚の脳全体の鮮明な画像を取得した。この研究では研究チームは、サンプルの多くの領域でこのシステムが細胞および細胞以下の解像度をどのように回復し、蛍光マーカーの空間分布の変化にどのように適応するかを示している。
(詳細は、www.mpi-cbg.de)