November, 7, 2016, Southampton--サザンプトン大学(University of Southampton)の研究チームは、金ナノアンテナアシスト相転移を利用して高速ナノスケール光トランジスタを作製した。研究成果は、Light, Science and Applicationsに発表。アンテナアシストスイッチおよび光メモリで新たな方向を開く研究である。
光と強い相互作用ができる微小ナノ構造は、微小光回路、メタサーフェスフラットオプティクスなど、広範な新興のアプリケーションにとって関心の的である。ナノアンテナは強い光共鳴を持つように設計されており、ここではエネルギーは回折限界の遥か下に集中する。そのように極端な集光は、局所エネルギー変換や環境発電などあらゆる種類の効果の強化に利用できる。光を小さな分子や量子ドットに結合、また非線形オプティクスにより新たな光周波数の生成などにも利用できる。
設計によるこうしたアンテナの精密チューニングの次には、その特性のアクティブチューニング能力に大きな関心が集まっている。
サザンプトン大学のOtto Muskens教授は、「電気あるいは光信号を使ってアクティブにナノアンテナをチューニングできれば、ナノスケールのフットプリントでデータ通信用のトランジスタタイプの光スイッチが実現できる。そのようなアクティブデバイスは、アンテナの光集光効果のチューニングにも利用でき、アンテナアシストのプロセスを切替え、調整できる新たなアプリケーションにつながる」と説明している。
サザンプトンのチームは、アンテナそのものの特性を利用して位相変化材料の低エネルギー光スイッチングを実現した。この効果達成に使用した材料は二酸化バナジウム(VO2)。二酸化バナジウムは、相転移点(68℃)以上に温度を上げることで絶縁体から金属にスイッチできる特性を持つ特別な材料。この材料の製造は簡単ではなく、サルフォード大学(University of Salford)のチームが作製した。同大学のチームは薄膜成長を専門にしており、この材料の非常に高品質の膜を成長できる。
金ナノアンテナは、薄膜上に作製され、二酸化バナジウムの相転移を局所的に起こすために使用された。
「ナノアンテナは、エネルギーをアンテナ先端に局所的に集めることによって二酸化バナジウムの相転移をアシストする。それは避雷針効果のようなものである。こうした位置は、アンテナ共鳴が局所摂動に最も敏感な場所でもある。アンテナアシストスイッチングは、極めて少量のエネルギーしか必要としないが、大きな効果を生み出す」とMuskens教授は説明している。
理論モデルは、スペイン、サンセバスチャンのバスクカントリー大学のチームが作製した。詳細な計算により、ナノアンテナは、アンテナ周囲の局所吸収により新たな経路を提供することが明らかになっている。アンテナアシストメカニズムは、単なるVO2膜に比べて非常に低いスイッチングエネルギーであり、ピコジュールエネルギーに相当し、計算された効率は40%を超える。