November, 4, 2016, Wien--ウィーン工科大学(TU Wien)でレーザとディテクタを1つにしたマイクロセンサが開発された。センサは、多様なガスを同時に特定することができる。
ガス検出技術には、たくさんの方法があるが、その一つは、赤外レーザを使う方法。レーザビームをガスに透過して隣接の別のディテクタに送り、光の減衰度を計測する。TU Wienの新しい微小センサは、この両方を1つのコンポーネントにまとめ、同じ微小構造を用いて赤外光の放出と検出の両方を行えるようにした。
TU Wien固体エレクトロニクス研究所、Rolf Szedlak氏は、「われわれが作製したレーザは通常のレーザポインタとは大きく異なる。量子カスケードレーザ(QCL)を使用する。QCLは、異なる材料の階層構造でできており、赤外範囲で発光する」と説明している。
この階層構造に電圧を印加すると、電子がレーザを通過する。材料と層厚を適切に選択すると、電子は1つの層を通って次の層に行くときに常に一定のエネルギーを失う。このエネルギーは光の形で放出され、赤外レーザビームが生成される。
「われわれのQCLは円形で、直径が1/2㎜以下。その形状特性により、レーザは特定波長でのみ発光する」とTU WienのGottfried Strasser教授は説明している。
Bernhard Lendl教授によると、これはガスの化学分析には最適である。多くのガスが赤外光の特定量しか吸収しないからである。したがってガスは、個々の赤外「フィンガープリント」を使って確実に検出できる。そのためには、正確な波長のレーザと、ガスによって吸収された赤外照射の量を計測するディテクタが必要になる。
Rolf Szedlak教授は、「われわれのマイクロ構造は、レーザとディテクタが1つになっているという大きな利点がある」と言う。2つの同心円量子カスケードリングはこの目的に最適である。光の放出と検出の両方(動作モードに依存)を行うからである。わずかに異なる波長でもそれができる。1つのリングがレーザ光を放出し、それがガスを透過し、次にミラーによって反射されて戻ってくる。第2のリングが、今度は反射光を受光し、その強さを計測する。さらに、2つのリングは直ちに役割を切替え、次の計測が可能になる。
この新しい形態のセンサのテストで、TU Wienのチームは困難な課題に直面した。イソブテンとイソブタンという、分子を区別しなければならなかった。名前が紛らわしく、化学的特性も非常に似通っている。マイクロセンサは、このテストを大成功でクリアした。両方のガスを確実に特定したのである。「レーザとディテクタの統合は、非常に大きなメリットをもたらす。極めてコンパクトなセンサを造ることができ、恐らくアレイでも、小さなチップに納めることができ、同時に複数の波長で使うことが可能になる」とGottried Strasserは話している。このアプリケーションの可能性は、実質的に無限であり、環境技術から医療まで広がる。
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