September, 29, 2016, 東京--東京工業大学 科学技術創成研究院 ハイブリッドマテリアル研究ユニットおよび化学生命科学研究所の山元公寿教授、神戸徹也助教らは、発光体を1つの分子内に最大60個まで導入した新たな発光体の開発に成功した。
発光体は集積中にある濃度になると濃度消光を起こす問題があったが、これを解決し、発光強度の自在な制御や固体発光、スイッチング特性を持つ機能性の高い発光体を構築した。
この研究は発光分子の精密集積が機能性発光材料に応用できることを実証したものであり、このアプローチは今後の材料設計の有力な手法になると期待できる。
東京工業大学の山元教授らの研究グループは、同グループが独自開発していたデンドリマーと呼ばれる規則的に枝分かれを繰り返す樹状構造をした高分子を利用することで、発光体を精密に配置した分子を作ることに成功した。分子内に配置する化学種として塩化ビスマスに着目。この塩化ビスマスがデンドリマー内に精密に集積され発光特性を発現することで、制御可能な発光デンドリマーの構築が実現した。
このデンドリマーは金属を取り込める場所を予め設計したものであり、塩化ビスマスを中心部から順番に、決められた場所に結合させて作った。これにより濃度消光を抑え、増やした分だけ発光強度を高めることに成功した。 構成要素であるビスマスの錯体は固体状態で濃度消光するのに対し、この発光デンドリマーは固体状態という極限の高濃度状態でも発光を保持した。
この発光はデンドリマー内でビスマスの錯体を形成することで発現する。そのため、ビスマスとデンドリマーを自在に結合/切断することができる。この特性に基づき、ビスマス添加量の調整や酸化還元反応を駆使することで、発光強度の自在かつ可逆な制御を可能にした。またこの可逆性にはデンドリマーのカプセル特性が寄与していることが分かった。カプセル特性は内部に取り込んだ物質を外部の物質から保護する効果であり、研究で利用したデンドリマーが取り込んだビスマスを外部から保護できることを見出した。
ビスマスイオンの集積による発光体は、新発光材のみならずセンサとしても利用できるため、生体の重金属解毒防御機能(メタロチオネイン)などの解明に役立つ。
さらにこの集積手法は種々の発光分子に応用でき、ガラスやポリマーへ塗布することで高輝度発光材料が作成できる。特に魅力的なのは、微弱発光の分子に対しても集積させることで強度を補強できる点である。これは光センサや光スイッチの新たな構築法として期待できる。
(詳細は、www.titech.ac.jp)