February, 24, 2014, Bedford--マックスプランク量子光学研究所(MPQ)量子動力学ディレクタ、Gerhard Rempe教授の研究チームは、約20万の超低オン原子雲(クラウド)媒体を光パルスにとって透明から不透明に変えることに成功した。この「シングルフォトンスイッチ」は、量子情報処理の重要素子、量子論理ゲート開発の第一段階となる。
この実験は、約20万のルビジウム原子雲を0.43マイクロケルビン(絶対零度の少し上)まで冷却することから始まった。原子雲(クラウド)は、2つのレーザビームを横方向に重ね合わせることによって光双極子トラップに保持されている。このクラウドを時間幅0.15μsの2つの光パルスで照射。パルスは極めて弱く、平均1フォトン程度しか含んでいない。最初のパルス、いわゆるゲートパルスがクラウド内で吸収される。正確に言うと、原子励起、原子の1つが励起されたリュードベリ状態になる。すると、第2パルス、つまりターゲットパルスの波長はもはや励起されることがなくなり、ブロックされる。言い換えると、原子のクラウドは、1つのフォトンを捉えて、トランスペアレント(透明)から不透明にスイッチする媒体として働く。フォトンはリュードベリ状態が続く限り、つまり約60μs保持される。
手続き全体は、多くの実験的計測の高度な組み合わせをベースにしている。「ゲートフォトンをトラップするためには、いわゆるスローライト技術を用いる」と実験リーダー、Dr. Stephan Dürrは言う。「フォトンがクラウドを移動するとき、周囲の媒体が極性を持ち、スピードが1000km/hに減速する。その結果、パルス長が数10μmに縮小する。これはある時間ウインドウでフォトンがクラウド内に完全に捉えられているようなものである。制御レーザを正確にこの時間周期で止めると、そのパルスは止まって完全に原子励起に変わる」。
第2パルスは、前に蓄積された原子励起と結合できない極性を持たせている。これによりターゲットパルスは蓄積されたパルスを読み出すことはできない。「続いて、制御レーザをONに戻すと、適切な極性のフォトンがクラウドからゲートフォトンを読み出すことができる。このサイクルを100μs繰り返す」と実験を担当したSimon Baur氏は説明している。
一連の実験で研究チームは、フォトンがあらかじめクラウドに蓄積されているとターゲットフォトンの数を20倍少なくできることを実証することができた。「シングルフォトンスイッチは量子情報蓄積の成功を告げるものである。すると蓄積時間が改善される。この新しいデバイスは、量子情報処理における重要素子、量子論理ゲート開発の第一段階である」。
電子コンポーネントに頼ることなく光で情報処理を行うという考えは、かなり以前からあったが、MPQの研究者はこれを現実にしようとしている。
(詳細は、 www.mpq.mpg.de)