June, 7, 2016, Cambridge--ペロブスカイトは、多くの有望な電子的、光学的特性があり、近年のホットな研究トピックになっているが、例えば太陽電池などのアプリケーションでは、効率や整合性を阻む制限がある。MITなどの研究チームは、光を使って材料を改良することで、ペロブスカイトの性能を改善するプロセスの理解が著しく進んだと発表している。
ペロブスカイトの結晶構造における欠陥が、太陽電池では光を電気に変換することを阻むが、「光で改善される欠陥もあるこを発見した」とMITのSamuel Stranksは言う。電子の動きが結晶内で活かされる場所に到達する前に、電子が原子と再結合する原因となるのが微小欠陥、つまりトラップである。
強い光を照射することで、電子を失い電荷をもつヨウ化物イオンが光を照射された領域から逃れ、それとともにその領域のほとんどの欠陥が一掃されることを研究チームは確認した。
「電界も磁界もかけず、光を照射するだけで膜をきれいにするこのイオンの移動が見られる。そのような効果は以前に観察されていたが、光照射の結果としてイオン移動による改善が示されたのは今回が初めてである」とStranksは説明している。
この研究は、有機-無機金属ハロゲンペロブスカイトとして知られる材料タイプにフォーカスしている。この材料は、太陽電池、LED、レーザ、光ディテクタなどのアプリケーションで有望視されている。特にフォトルミネセンス量子効率、太陽電池の効率を最大化するカギになる特性において優れている。しかし、これらの材料のバッチの違い、同じ膜のスポットの違いで性能が変動し、予測しがたい。新しい研究は、何がこうした違いの原因か、またそれをどのように減らし、除去するかを把握することを目的にしていた。
Strandsは、「究極の目的は欠陥のない膜を作ることである」と言う。結果として効率が改善されると発光だけでなく、光を捕らえるアプリケーションでも有用になる。
薄膜ペロブスカイト材料の欠陥を減らす以前の作業は、電気的、化学的処置に注力していたが、「同じことが光でできることがわかった」とStranksは言う。利点の1つは、材料の特性改善に使用する同じ技術が、同時に観察するための高感度プローブとして使え、このような有望な材料の振る舞いの理解向上にも使えることである。
この光ベースの処理のもう1つの利点は、処理中の膜と何も接触させる必要がないことである。例えば、電極を接触させたり、化学溶液に材料を浸すことなどは不要である。その代り、照射光源を当てるだけでよい。光誘起クリーニングというこのプロセスによって、有用なペロブスカイトベースのデバイス開発に「進んでいける」とStrnksは話している。
同氏によると、照射の効果は時間経過とともに低下する。したがって、現在の課題は、実用的になるまで長くその効果を維持することである。
スタンフォード大学材料科学・工学教授、Michael McGeheeは「ペロブスカイトを照射することで、ヨウ化物が動き回ってヨウ化物欠陥を除去できることによってフォトルミネセンス効率が改善されることは素晴らしいことである。この研究は太陽電池の改善には寄与しないが、太陽電池におけるこれらの複合的材料がどのように機能するかの理解を大いに促進する」とコメントしている。