June, 3, 2016, Tokyo--東京大学大学院工学系研究科の古澤明教授と吉川純一助教らの研究グループは、光子メモリーを用いることにより光子の飛来タイミングを制御し、2 光子の飛来タイミングの自在な同期に初めて成功した。
これまでは、量子論理ゲートにランダムに飛来する光子のうち、たまたま同時に来た光子を測定後に事後選択する手法をとらざるを得なく、量子論理ゲート動作の効率が非常に低くなるという致命的な問題があった。今回の成果により、こうした問題は大きく緩和され、さらにこの技術を発展させれば、量子論理ゲートの連続動作が可能となる。したがって、この成果は超大容量光通信や超高速量子コンピュータの実用化へ向けて突破口となるもので、光量子論理ゲートの確率的動作問題の解決に大きく近づいた。
研究グループは、光子メモリーを用いることにより光子の飛来タイミングを制御し、2光子の飛来タイミングの自在な同期に初めて成功した。この光子メモリーは光子の生成とメモリー機能を持ち、2つの連結した光共振器からなる。そのうちの1つの光共振器中には非線形光学素子が入っており、光パラメトリック発振器となっている。もう1つの光共振器中には光位相変調器が入っており、光位相変調器の電圧を制御することにより開閉できる光シャッターとなっている。光パラメトリック発振器は単一光子生成器となっているが、通常は光シャッターが閉じられており、生成された光子は光パラメトリック発振器から外へ出ることはできない。しかし、光位相変調器の電圧を制御し光シャッターを開けば、光子を取り出すことはできる。つまり、この光子メモリーでは欲しいタイミングで光子を取り出すことを可能にした。研究グループは、この光子メモリーを2つ用意し、2光子の飛来タイミングを自在に制御し、2光子を同期してビームスプリッタに飛来させた。これにより、量子レベルでのオンデマンドな干渉に世界で初めて成功した。この光子メモリーを用いると、生成タイミング差が1.8マイクロ秒までであれば同期することが可能で、従来に比べ同期効率が25倍向上した。
この技術により、従来の光量子情報処理の確率的動作の問題は大きく緩和され、この技術をさらに発展させれば、量子論理ゲートの連続動作が可能となる。したがって、この成果は超大容量光通信や超高速量子コンピュータの実用化へ向けた突破口となるもので、光量子論理ゲートの確率的動作問題の解決に大きく近づいた。
(詳細は、www.t.u-tokyo.ac.jp)