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NIMS、ペロブスカイト太陽電池の変換効率18.2%を達成

April, 6, 2016, つくば--NIMSの研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の標準面積のセルで、世界で初めて18%を超えるエネルギー変換効率を達成した。
物質・材料研究機構 (NIMS) 太陽光発電材料ユニットの韓礼元ユニット長をはじめとする研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の標準面積 (1cm2) のセルで、世界で初めて18%を超えるエネルギー変換効率を達成した。このデータは、国際的に認知された中立な太陽電池評価機関である産業技術総合研究所 (AIST) 太陽光発電研究センター評価・標準チームによって確認された。
 これまで報道されたペロブスカイト太陽電池の変換効率の記録は、ほとんどが面積の小さなセル (約0.1cm2) で得られたものである。しかしセル面積が小さいために測定の誤差が大きく、測定方法も公開されていないため、信頼性を持って研究・開発を進めるために、標準面積 (1cm2) のセルで中立な太陽電池評価機関にて変換効率を得ることが重要となっている。NIMSでは昨年5月、世界に先駆けて1cm2角のセルにおいて変換効率15%を実現した。また、さらなる変換効率の向上を目指して、混合カチオン系のペロブスカイト材料の高純度作製方法の提案も行っている。
 研究グループは、上記の成果をベースに、ペロブスカイト層の混合カチオンの比を調整し、ヨウ素を一部臭素に置き換えることで、良質なペロブスカイト層の結晶粒子を得ることに成功。これにより、光照射で形成された電子とホールを効率よく取り出すことが可能になり、短絡電流密度を21mA/cm2以上に増大させることに成功した。さらに、ペロブスカイト層と電子輸送層などの各層の膜厚を正確に制御し、太陽電池内部の電気抵抗を減らすことで変換効率の大幅な向上を実現し、変換効率18.2%を達成した。
 今後は、さらなる高性能キャリア輸送材料や太陽光の波長をより広く利用するペロブスカイト材料を開発すると共に、ペロブスカイト太陽電池の界面制御によって、現在実用レベルでもっとも多く製造されている多結晶シリコン太陽電池のセル変換効率 (約20%) を超えることを目標としている。