December, 1, 2015, Braunschweig--欧州宇宙機関(ESA)の赤外線観測Herschelのような宇宙望遠鏡は、遠赤外放射観測をミッションとしてるが、このような望遠鏡では機器の冷却が極めて重要になる。観測機そのものが妨害赤外放射を放射してはならないからである。
こうした望遠鏡のミラーは、-190℃以下の温度で使用され、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)のような特殊な超安定セラミックでできている。そのような低温でも正確な寸法を正しく設計するために、使用される材料の正確な熱膨張が分かっていなければならない。最近完了したESAプロジェクトにしたがい、ブラウンシュヴァイクのドイツ連邦物理工学研究所(PTB)は、このようなセラミックスの熱膨張、単結晶シリコンの熱膨張を-266℃~+20℃の範囲で正確に計測した。調べた温度範囲の非常に広い部分で、達成した正確さは1℃あたり長さ約10億分の1の相対変化に一致する。調査からわかったことは、これまでに用いていた基準材料「単結晶シリコン」の値が修正されなければならないということである。
Herschelのような宇宙望遠鏡は、地球からはアクセスできないスペクトル範囲を研究するもので、宇宙でだけ使用される。そのような望遠鏡の設定で、使用される材料の正確な熱膨張を知ることが、いかに重要であるかが最新のESAミッションで明確に示された。あらかじめ行われたシミュレーションが製造されたミラーと一致しないことが明らかにされたからである。その不一致は、幸いなことに、宇宙で発見されたのではなかったが、それでも不必要な遅れにつながった。そうした不愉快な不意打ちが今後再発しないように、使用される材料の徹底した調査が必要である。ESAプロジェクトにそった調査では、René Schödelの研究グループがPTBの超精密干渉計を使ってサンプルの長さをナノメートル精度で全温度範囲にわたり計測した。
この干渉計は、その種のものでは世界にただ一つである。計測を同様の精度でしかももっと簡単に行うには、他の研究機関でも、比較のために、正確な熱膨張が分かっている基準材料が用いられる。そのような基準材料は単結晶シリコンであり、それは極めて欠陥の少ない連続格子構造によって特徴づけられる。また、研究者によっても調査されていた。超安定なセラミック材料の一部と同様に、シリコンは特別なふるまいを示す。低温では、シリコンはある温度以下で再び膨張するのである。日常的には考えられない、この動的特性もPTBの研究者が正確に計測した。こうした計測から重要な結果が生じた。広い温度範囲にわたり、単結晶シリコンで今日まで使用されていた基準値から大きな逸脱があることが明らかになった。同プロジェクトの結果は、計画されている宇宙飛行、James Webb Space Telescope(JWST)にとって重要となる。JWSTでは、-220℃以下の温度を使用することが計画されているからだ。また、Space Infrared Telescope for Cosmology and Astrophysics (SPICA)では、使用温度はさらに下がるとされている。
研究成果は、Physical Review Bに論文発表されている。