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さまざまな距離や照明条件で鮮明な視界を提供するスパイラルレンズ

February, 19, 2024, Washington--ワシントン—University of Bordeauxと CNRS研究チームは、多様な光条件、さまざまな距離で明確な焦点を維持するらスパイラルレンズを開発した。
新しいレンズは、視力矯正に使用される累進レンズとよく似ているが、これらのレンズで一般的に見られる歪みはない。コンタクトレンズ技術、白内障用眼内インプラント、小型化されたイメージングシステムの進歩に役立つ可能性がある。

「既存の多焦点レンズとは異なり、われわれのレンズは幅広い光条件下で優れた性能を発揮し、瞳孔の大きさに関係なく多焦点性を維持する」と、ボルドー大学(University of Bordeaux)とフランス国立科学研究センタの共同研究ユニットPhotonics, Numerical and Nanosciences Laboratory(LP2N)のBertrand Simonはコメントしている。「潜在的なインプラント使用者や加齢に伴う遠視の人々にとって、そのインプラントは一貫してクリアな視界を提供し、眼科に革命をもたらす可能性がある。」

Optica Publishing GroupのOptica誌で、研究チームは、スパイラルディオプタと呼ぶ新しいレンズについて説明している。その螺旋状(スパイラル)の特徴は、1つのレンズに複数のレンズがあるように、多くの別々の焦点を実現するように配置されている。これにより、さまざまな距離で鮮明に見ることができる。

「眼科用途に加えて、このレンズのシンプルな設計は、コンパクトなイメージングシステムに大きなメリットをもたらす可能性がある。これらのシステムの設計と機能を合理化すると同時に、光学素子を追加することなく、多様な深さでイメージングを実現する方法も提供する。これらの機能は、レンズの多焦点特性と相俟って、高度なイメージングアプリケーションにおける奥行き知覚のための強力なツールとなる」(Simon)。
光の渦をつくり出す

スパイラルレンズの設計は、論文の筆頭著者、フランスのSPIRAL SASのLaurent Galinierが、患者の重度の角膜変形の光学特性を分析していたときに生まれた。そこで同氏は、排水溝を流れる水のように光を回転させるユニークな渦巻きデザインのレンズをコンセプトにした。光学渦として知られるこの現象は、複数のクリアな焦点を作成し、レンズが多様な距離でクリアなフォーカスを提供できるようにする。

「光渦を発生させるには、通常、複数の光学部品が必要になる。しかし、われわれのレンズは、光学的な渦を作るために必要な要素をその表面に直接組み込んでいる。光渦の生成は盛んな研究分野だが、われわれの手法はプロセスを簡素化し、光学分野の大きな進歩を示している」とGalinierは説明している。

研究チームは、高度なデジタル機械加工を使用して、独自のスパイラルデザインを高精度に成形することでレンズを作成した。次に、このレンズを使用して、検眼医のライトアップボードに使用されているものとよく似たデジタル「E」を画像化することで、レンズを検証した。チームは、使用した絞りサイズに関係なく、画質が満足のいくままであることを観察した。また、光渦は、光軸の周りの巻線の数であるトポロジカル電荷を調整することで変化可能であることを発見した。また、レンズを使用したボランティアは、多様な距離や照明条件で視力が著しく改善したと報告している。

分野横断
新しいレンズを実現するには、直感的に作られたデザインと、分野横断的なコラボレーションによる高度な製造技術を組み合わせる必要があった。「直観的な発明家によって最初に考案されたスパイラル視度レンズは、光学科学者との集中的な研究協力を通じて科学的に実証された。その結果、高度なレンズを作るための革新的なアプローチが生まれた」(Simon)。

研究チームは現在、レンズが生み出すユニークな光学渦の理解を深めようとしている。また、このレンズの視力矯正能力を体系的に試験し、実環境での性能と利点を包括的に確立する計画である。さらに、このコンセプトを度付き眼鏡に適用する可能性を模索しており、複数の距離にわたってユーザにクリアな視界を提供する可能性がある。

「この新しいレンズは、照明条件の変化下で人々の視界の深さを大幅に改善する可能性がある。この技術による将来の開発は、ドローンや自動運転車向けの小型イメージング技術、ウェアラブルデバイス、リモートセンシングシステムの進歩にもつながり、信頼性と効率性を高める可能性がある」とSimonはコメントしている。