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厚いレンズの代わりに薄いメタサーフェス

September, 8, 2023, Jena--いわゆるメタサーフェスは、将来的に光学系を薄くすると同時に、その機能を向上させるのに役立つ。問題は、これまで、従来の製造プロセスでは、多くの場合1㎜2未満の小さなメタサーフェスしか実現できなかったことだ。
Fraunhofer IOFの研究者は、電子ビームリソグラフィを用いて直径約30㎝のメタサーフェスの製造に世界で初めて成功した。研究チームは現在、その方法を”Journal of Micro/Nanopatterning, Materials, and Metrology”「マイクロ/ナノパターニング、材料、と計測学誌」に発表。さらに、新しいメタ構造は、6月にドイツのミュンヘンで初めて公開された。

「レンズとミラーの500年後、先を考える時が来た」と、FraunhoferIOF応用光学・精密工学研究所のマイクロ・ナノ構造光学部門ヘッド、Dr. Falk Eilenbergerは説明している。いわゆるメタサーフェスは、ここでは代替手段になり得る。これらは、完全な光学機能を表面に集中させ、ナノ構造を介して表面でこの機能を達成するコンポーネントである。同氏の説明によると、古典的なレンズとの違い以下の点にある。「レンズでは、機能はマクロな形状で決まる。それが、レンズが厚く湾曲している理由である。現在、代わりにメタサーフェスがある。それは薄く、光の波長よりも小さいスケールである」(Eilenberger)。

メタサーフェスは、しばらくの前から、科学や研究で使用されてきた。とは言え、この場合のコンポーネントサイズは、多くの場合、わずか数mm2である。これは学術研究には十分だが、多くの産業アプリケーションには適さず、将来的に古典的なレンズの真の代替品にならないことは確実である。したがって、FraunhoferIOFの研究者は、革新的なメタサーフェスをより大規模に実現する方法に専念してきた。その結果、研究チームは、今回初めて直径30㎝のメタサーフェスを提案している。「われわれはメタサーフェスの発明者ではない。しかし、これほど大規模にそれを実証できるのはわれわれだけである」(Eilenberger)。

高精度・高効率の高分解能構造
研究チームはどのようにしてこの画期的な成果を達成したか。Dr. Uwe Zeitner教授は、以下のように説明している
「電子ビームリソグラフィの助けを借りて「メタサーフェスを作製するために、文字投影(character projection)と呼ばれる電子ビームリソグラフィの特別な書き込み戦略を使用した」と、フラウンホーファーIOFの研究者、研究所の科学局のメンバー、Dr. Uwe Zeitnerは説明している。キャラクター投影は、パターンをより小さな単位に分割する方法。次に、電子ビームを使用して、これらの小さなパターンのそれぞれを表面上に次々に作成する。これにより、複雑な構造物を高精度かつ効率的に製造することができる。
「文字投影を使用すると、非常に高解像度の構造を比較的高速で並行して露光できる。これは電子ビームリソグラフィでは普通ではない」(Zeitner)。同教授は、FraunhoferのDr. Michael BanaschおよびDr. Marcus Trostとともに、大面積でのマイクロ光学とナノ光学の作製における電子ビームリソグラフィの可能性を論文で説明している。論文は、”Journal of Micro/Nanopatterning, Materials, and Metrology”に掲載されている。

今回の論文で、論文の著者は、従来のリソグラフィ技術が、より大きな構造の作製では限界に達することが多いことを明らかにしている。
「波長以下の構造寸法が小さいため、高分解能電子ビームリソグラフィーは原理的にメタ構造の製造に非常に適している。しかし、この技術は比較的遅い。これまでのところ、本質的に比較的小さな面積の素子だけがそれを使用して作製された-主に数平方ミリメートルのオーダーである。より広い領域では、露光時間は非常に急速に非現実的に大きな値に達する」。
Uwe Zeitnerによると、文字投影を使用することで、研究者は電子ビームリソグラフィの高解像度と、露光時間が「爆発」することなく大きな素子領域の両方に対処できるようになった。したがって、論文の著者は、電子ビームリソグラフィが広い領域にマイクロ光学構造とナノ光学構造を作製するための技術になり得ることを示している。

小型化と同時高機能化
新しい製造技術は、将来的に著しく薄い光学系の構築に役立つ。
「この技術は、イメージング光学系に革命を起こす可能性がある」と、Falk Eilenbergerは言う。例えば、「システムのサイズを縮小すると同時に、光学機能を高めることができるからだ」。
Uwe Zeitnerは具体的な応用例を挙げている。「このような大きなメタサーフェスは、小さなスペースで大きな偏向角が必要なコンパクトな光学系に特に有利だ。たとえば、VR/ARグラスの場合だ。スマートフォンの非常に小さな光学部品でも、そのようなアプローチで有利な設計を実現できる」。
その他の潜在的なアプリケーションには、高解像度分光法またはコンピュータ生成ホログラムが含まれる。