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風を使って飛行時間を延ばす新しい検査ドローン

June, 20, 2023, Lausanne--EPFLのスピンオフ、Elythorは、新しいドローンを開発した。その翼形状は、風の条件と飛行位置にリアルタイムで適応できるので、ドローンのエネルギー消費を減らせる。さらに、翼の位置は、可変であるので、そのドローンは垂直、あるいは水平に飛行できる。これらの特徴により、それは発電所の検査の完璧な候補となる。

数世紀にわたり人間は、空を非常に簡単に滑空する鳥に魅了されてきた。Elythorが開発した新しい検査ドローンMorphoは、風を有利に利用する鳥の本能的能力から、インスピレーションを得た。一部翼付ドローン、一部はクワドコプタであるMorphoは、手近の作業に応じて形状を変えられるハイブリッドUAVである。その適応型翼は、ドローンの飛行時間を延ばし、操縦性を高めている。内蔵センサとカメラを統合したこれらの特徴により、それは野外と同様に閉じられた空間でも飛ぶことができるので、発電プラント、高圧線、ウインドタービン、ガスパイプライン、沖合石油プラットフォームなど他のインフラストラクチャの検査に最適である。

検査時間を1/3にカットすることでコスト削減
4脚で立つと、Morphoは、小型ロケットに似た流線型形状になる。しかし、そのローターがうなりを上げ始めると、それは素早く変形する。ドローンの垂直離陸能力は、それが狭い空間に導入できるわずか数㎝の装置内を飛べ、ぶつかることなく装置を検査できることを意味する。検査が完了すると直ぐにMorphoは、そのモーターを変え、素早く次の検査サイトへ飛び立つ。そのドローンが途中で強風、急激に変化する風に遭遇すると、軌跡を維持するのに必要なほどに翼を縮める。それは、適切な風の条件下でも滑空できる。その全てが検査中の時間節約になるが、ドローンが長時間飛行できることを意味する。「われわれは、Morphoを使うことで、ドローン検査時間とコストを平均35%削減できると計算した」Harry Vourtsis、Elythor共同創始者/CEOは、言う。Morphoが次の検査サイトに到達すると、それは翼を折り畳み、装置までに飛行できるように垂直姿勢に戻る。

非対称翼調整により強風で安定
「翼付のドローンは、飛行時間が長いという利点があるが、クワドロプタは、操作性が優れている。われわれは、その2つを統合した、ドローンのパワー要件をさらに低下させるためである適応的翼システムを追加した」(Vourtsis)。ほとんどの固定翼垂直離陸、着陸(VTOL)ドローンは、妥協の産物である。翼は、垂直飛行中の摩擦を減らせるように小さくっているが、水平飛行中に十分な揚力が得られるように大きくなっている。VTOLドローンは、強風時の離着陸のトラブルがある。その大きな表面積が風に対して垂直になっているからである。

Morphoの翼制御システムは、EPFLのLaboratory of Intelligent Systemsにおける数年の研究成果であり、多数の論文に掲載されている。システムは、風の方向とスピードをモニタリングするソフトウエアプログラムにリンクされたセンサを含む。Nathan Müller、Elythorの共同創始者は、「コントローラは、風の方向の変化にともない、ドローンの軌跡と効果的なスピードに基づいて、翼を固定するか、風で自由に動くようにさせるかどうかを自動的に選択する。翼の表面エリアは、風の方向により対称的、あるいは非対称的のいずれかに調整される」と説明している。

制御システムを動かすアルゴリズムは、空気摩擦と揚力の間のトレードオフの最適化だけでなく、電力利用の最小化も狙ったものである。これは、ドローンを滑空させするために風の流れを利用する必要がある。また、ヨー、あるいはその垂直軸周りの回転を調整するために翼の非対称性を加減する。これにより、強風での安定性が高まる。

EPFLラボで行われた定量分析によると、Morphoは、非常に優れた操作性とパワー効率を達成している。「われわれの設計では、ドローンが垂直姿勢で飛行している時、最大85%まで省エネが可能になっている。また、ドローンの姿勢と安定性は著しく改善されている」(Müller)。こうした利点は、Morphoが、幅広い範囲の天候条件で検査が実行できることを意味している。

検査プラットフォームを変革したい
Elythorの狙いは顧客にターンキーソリューションを提供することであるので、Morphoが収集したデータを編集、分析するソフトウエアも開発している。「われわれは、検査プラットフォームを変革したい」(Vourtsis)。今日、発電オペレータは、検査する装置が存在する場所に応じて様々な種類のドローンを利用している。また、ファシリティは、数km以上に広がることがよくあり、ウインドタービンや送電塔などへ入り込む必要がある複雑な構造となっている場合もある。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)