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カメラと慣性計測装置利用、頑健な位置姿勢推定システム

May, 30, 2023, つくば--産業技術総合研究所(産総研)デジタルアーキテクチャ研究センター スマートモビリティ研究チーム 大石 修士 主任研究員らは、カメラとIMU(慣性計測装置)を利用した位置姿勢推定システム(Visual Positioning System、VPS) L-C* (エル シースター)を開発した。

位置姿勢の推定には、従来は専用の地図を用いていたが、この技術により、汎用的な色付き3次元地図とカメラ画像を照合してカメラの位置姿勢を取得できる。照明や天候、景観が変化しても頑健に位置や姿勢の変化を検知可能。また、従来は地図と画像の照合に膨大な計算が必要だったが、新たにIMUを活用し照合間の動きを補間する仕組みを導入。これにより計算の負荷が高くなる主な原因である照合頻度を1/30 (30 Hzから1 Hz)まで引き下げることができた。その結果、安価な組み込みPCでも安定して動作するVPSを実現した。また、異なるセンサ情報の融合により、カメラだけでは継続的な位置姿勢推定が困難であったデータでも、照合周期30 Hzで3 mm、1 Hzでも44 mmの誤差で位置推定を達成した。

カメラとIMUはスマートフォン・スマートグラスにも内蔵されている一般的なセンサで、拡張現実(Augmented Reality、AR)や主観映像解析、パーソナルモビリティの自動運転など、個人端末を利用した各種システム・サービスの基盤として広く活用が見込まれる。

今後は、開発したVPSをさまざまな対象に応用する予定。一例として、センサを持たないパーソナルモビリティ、ヘッドレスモビリティの自動運転を提案している。搭乗者のスマートフォンをモビリティの「目」として取り付け、その場で自律化するというコンセプト。L-C*を利用して自己位置を推定しつつ目的地へと制御すれば、レーザ距離計などを取り付けた専用車両を使わず安価に自動運転を実現できる。その他、スマートグラスを利用した人行動解析や施設内の案内を目的としたAR情報の提示など、多様な展開を目指している。

技術の詳細は、2023年5月29日から6月2日まで英国・ロンドンで開催される国際会議IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA)2023で発表予定。