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LEDの光出力を大幅に向上する製造技術の開発に成功
March 3, 2011, 名古屋--科学技術振興機構(JST)は、独創的シーズ展開事業・委託開発の開発課題「LEDモスアイ構造製造技術」の開発結果を成功と認定した。
この開発課題は、名古屋大学 大学院工学研究科、天野浩教授研究チームの研究成果をもとに、平成19年3月から平成22年9月にかけてエルシード株式会社に委託して、企業化開発(開発費 約2億円)を進めていた。
今回の技術では、LED基板上の凹凸が細かいほど光の全反射は抑制されて外部に光が透過することから、蛾の眼のような微細な凹凸構造(モスアイ構造)を持つ基板を製作した。低エネルギーの電子線を用いることで、500nm幅のコーン形状体を規則的に並べたモスアイ構造を製作することが可能になった。この技術によって作られたモスアイ構造を持つLED素子は、加工しない場合と比べて1.7~2.5倍の光出力の向上が実現できた。また、短いパターン形成処理時間(1分程度)で製作できるため、生産性が高いことも特徴。
モスアイ構造をLED素子材料上へ製作する際は、基板上に電子線投影露光によるステンシルマスクのパターンを形成した後、ドライエッチングによりコーン形状をしたモスアイ構造の形成を行う。製作過程では、高精度でしかも処理能力の高いパターン形成技術と、サイドエッチングによってモスアイのコーン形状を形成するテーパ角制御技術の確立が重要になる。
電子線投影露光による高精度なパターン形成では、電子線加速電圧や電子の量(ドーズ量)によって最適な露光条件を決定。また、処理能力向上のためにパターンのホール径や基板表面に塗布するレジスト材料の最適化を図り、2インチサイズのウェーハで1分程度という短いパターン形成処理時間を達成。さらに、テーパ角制御では、エッチング耐性の高い層と耐性の比較的低い層の二層構造を採用し、両層の膜厚やその比率によってテーパ角制御を可能とした。この製作工程は、AlGaInP系結晶、窒化物系結晶やサファイアなど各種のLED基板材料に適用可能。
このように確立されたモスアイ構造製造技術をもとに、実際のLED素子上にコーン形状体を形成する場合の最適なアスペクト比(高さと周期の比)と周期について検討した結果、アスペクト比についてはおよそ1以上が望ましいことが分かり、コーン高さ500nmでは最適周期が500nmとなる。
これらの結果を実際の赤色や青色など各種LED基板に適用し、モスアイ加工しない場合と比較して光出力が1.7~2.5倍、また、基板上直角方向の光度が2~3.5倍向上する効果を確認した。
今回の技術は、既存のさまざまなLED基板材料上にモスアイ構造の製作を可能とし、素子の光取り出し効率を大きく改善できることから、白色LEDをはじめ、高効率・高出力を必要とする広範なLED製品への応用が期待される。
(詳細は、www.jst.go.jp)