April, 2, 2015, 東京--NICTは、株式会社トクヤマと共同で、深紫外波長帯において世界最高出力となる90mW超の深紫外LEDを開発した。
ナノ光構造技術により、深紫外LEDの光取出し効率を大幅に向上させることで、小型・高出力な深紫外LED光源を実現した。今回開発した深紫外LEDは、最も殺菌性の高い波長265nm、室温・連続動作で、光出力90mWを達成したこれまでにない実用上要求される水準を十分に上回っている。
薬剤を用いないクリーンな殺菌システムの実現や既存の水銀ランプの置き換え、新規市場の創出など大規模な需要が見込め、殺菌から医療、工業、環境、ICTに至るまで幅広い分野の産業、生活・社会インフラに画期的な技術革新をもたらすことが期待されている。
NICTとトクヤマは、新開発のナノ光構造技術を駆使して、深紫外LEDの光取出し効率を大幅に向上させることで、深紫外波長帯において世界最高出力となる深紫外LEDを実証することに成功した。殺菌効果が最も高い発光波長265nm、電極メサ面積0.1mm2、室温・連続動作において90mWを達成し、実用上要求される水準を十分にクリアーする、これまでにない小型、高出力な深紫外LEDを実現した。
今回開発したAlGaN系深紫外LEDは、結晶欠陥の発生を低減できる窒化アルミニウム(AlN)基板上に作製しているが、AlN基板は一般的に用いられるサファイア(Al2O3)基板に比べ屈折率が高く、これまでは基板表面での全反射により、極めてわずかな光しか外部に取り出すことができなかった。この問題を解決する新しい技術として、理論・実験両面の工夫により、従来にない光取出し構造を開発した。光取出し面となるAlN基板表面に2次元フォトニック結晶とサブ波長ナノ構造とを組み合わせたハイブリッド光取出し構造を作製することにより全反射を抑制し、光取出し効率の向上率196%を達成した。実用上重要なデバイス性能指標である光出力密度として90W/cm2(発光波長265nm、室温・連続動作)を実現し、他研究機関を大幅に上回る高出力動作に成功している。今回新たに得られた小型、高出力な深紫外LEDは、これまで適した光源が無く実現が難しかった様々な新しい深紫外光を利用したアプリケーション開発の可能性を広げることが期待される。
この開発ににより、今後の深紫外LEDの本格的な普及、応用製品群の実現に向けて大きな進展が期待される。小型・ポータブルで高出力な深紫外LEDの実現は、既存光源市場の置き換えだけではなく、持ち運び可能なウィルス殺菌システムやポイントオブケア型の医療診断・分析など、これまでにない様々な新規市場の創出も見込める。研究グループは、深紫外領域での光取出し技術を一層深化させることで、可視LEDに匹敵する性能実現に向けて取り組んでいく。