Science/Research 詳細

産総研/日亜化学工業、照明空間の明るさ評価に救世主

August, 28, 2024, つくば--産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門 神門賢二 主任研究員、木下健一 主任研究員、中澤由莉主任研究員、日亜化学工業株式会社(日亜化学工業)は、国際照明委員会が定める白熱電球の標準スペクトルを発光ダイオード(LED)で再現し、既存の光度標準電球を代替する光源を開発した。 照明空間の快適な明るさは照度計により評価される。照度計(照度センサ)は、スマートフォンへの組み込みやディスプレイの調光に活用されるなど、身近な計測器である。2020年4月以降に販売された新型の自動車には、安全の観点から薄暮時間帯の無灯火を無くすために、オートライトが義務付けられた。周囲の照度が1000ルクス(lx)未満になると、ヘッドライトを自動的に点灯させる機能が搭載されている。自動車の安全管理の観点からも照度計を正しく使用するためには、国家計量標準にトレーサブルな校正を受けるなど、正確な照度の計測・管理が重要である。 照度計の校正は、照度計を販売する各メーカーおよび試験機関において、国家計量標準にトレーサブルに校正された白熱電球である「光度標準電球」を基準として行われている。しかし、白熱電球は世界的に生産されなくなってきており、光度標準電球の枯渇が問題になっている。 産総研と日亜化学工業は、光度標準光源が示す標準スペクトル(CIE標準イルミナントA)をLEDで再現した光源(イルミナントA標準LED)を開発した。イルミナントA標準LEDは照度計の校正に必要なスペクトルや照度値などの仕様を満たすだけでなく、LED素子の安定化処理を適切に行うことで、点灯劣化を光度標準電球の20分の1程度に抑制できる。このため、現場での標準光源の校正周期の延長や測定精度の向上も期待できる。 この技術の詳細は、2024年8月16日に「Measurement」に掲載された。 (詳細は、https://www.aist.go.jp)