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純青色発光量子ドット(QD)の精密合成と電子顕微鏡による原子レベル構造決定

November, 10, 2022, 東京--東京大学大学院理学系研究科化学専攻の中村栄一特別教授らの研究グループは、一辺当たり4つ、計64個の鉛原子からなる立方体の純青色ペロブスカイトQD(論文ではQD4)を高精度かつ無欠陥で合成し、蛍光発光波長463 nm、半値幅15 nm、蛍光量子効率97%という、発色の国際規格であるBT.2020色度が理想とする純粋な青色((0.131, 0.046))に肉薄する発光((0.135, 0.052))を実現した。
テレビジョン向けQD-LEDの赤や緑のQDでは急速に改善が進んでいるが、そのサイズが数nm以下となる青色QDは構造的に純粋、均一に合成することが困難。合成反応系の温度つまり物理量を制御するという従来のトップダウン的合成法の問題点が露呈している。
この研究では基本発想を転換し、原子と分子から組み上げる「自己組織化による精密合成」の概念に基づくボトムアップ手法を案出し、発光波長463nm、半値幅15nm、蛍光量子収率97%を達成した。さらに山形大学城戸淳二教授、千葉貴之助教と共同でQD-LEDデバイスを作成し、発光波長464 nm/半値幅15 nmというBT.2020 が定める467 nmの単色光源に極めて近いLED発光を達成した。
QDの構造決定には単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡法(SMART-EM)を活用し、QDの動的構造を世界で初めて原子レベルで解明した。その結果はこの青色QDは、「ナノ粒子」と呼ぶよりは、巨大分子と見做すに相応しいきっちりした構造を持っていることを示している。従来の限界を超えたイメージング手法は、研究者によると、「今後のQD材料開発のキーテクノロジーになる」。

ごく最近報告された類似の論文は青色QDの例が掲載されているが色の純度と発光効率は明記されていない(Q. Akkerman et al, Science, 377 (6613), 1406-1412, 2022)。掲載生データの測定によると波長半値幅は29 nm、蛍光量子収率は約60%である。

(詳細は、https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2022/8127/)