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樹脂のように低温で液相から成形できるLED部材用低融点ガラス開発

February, 13, 2018, つくば--産業技術総合研究所(産総研)無機機能材料研究部門高機能ガラス研究グループ 正井博和主任研究員は、内閣府が進め、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が管理するプロジェクトにおいて、石塚硝子株式会社と共同で、液相法によって500 ℃程度で作製できる、耐水性、耐熱性、耐光性を持つ無色透明な低融点ガラスを開発した。
 この技術は、ガラス前駆体液(ガラス化する前の液体状の原料混合物)を加熱し、500 ℃程度で溶融させて型に流し込み成形できるガラス作製技術。得られたガラスは、LED用のレンズや透明封止剤などさまざまな光学材料への応用が期待される。
 低温でガラスを作製する手法としては、金属アルコキシドを液相中で反応させるゾルゲル法が知られているが、反応で得られたゲルはそのままでは光学材料として使えず、緻密なガラスを得るために、さらに1000 ℃程度で焼成する必要があった。
 今回開発した技術では、常温で流動性を示すリン酸と、物性を制御するための種々の金属化合物を原料とし、ガラスの前駆体液を調製する。この前駆体液を加熱すると、500 ℃程度で流動性を示すガラス融液が得られ、これを型に流し出し冷却することで、ガラスが得られる。ガラスの屈折率などの物性は、前駆体液に添加物を加えておくことで調整できる。
 さらに、組成及びプロセスを検討・改良することで、低融性、耐水性、耐光性、耐熱性を併せ持つガラスの開発に成功。今回開発したガラスは、有機物を含まない材料でありながら、低温で軟化するため(ガラス転移温度:約235 ℃、屈伏点:約260 ℃)、低温で成形加工できる。
今回開発したガラスの屈折率は波長633 nmで1.65程度であり、シリコーンやエポキシ、ポリカーボネイトといった樹脂、BK7ガラスや、ソーダライムガラスに比べて高い。この屈折率は、工業的に用いられている半導体素子の屈折率との差が小さいので、発光素子に用いれば、光の取り出しに有利と予想される。
 今後、LED光源が高輝度化するに伴い、その部材にも耐熱性が求められると予想される。今回、開発したガラスは低温で成形可能であり、耐熱性と耐光性を併せ持つため、LED用のレンズや封止材としての利用が期待できる。また、低温で作製・加工できるため、低温の溶融設備しか保有していない幅広いユーザーが利用でき、様々な型を用いた多様な形状のガラスが比較的簡便に作製ができる。
 この技術によるサンプルは、2018年2月14~16日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されるnano tech 2018第17回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議で展示予定である。
(詳細は、www.aist.go.jp)