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国際研究チーム、超高輝度、高速・高輝度発光量子ドットを確認

January, 22, 2018, Tucson--近年精力的に研究されているある種の量子ドットはあらゆる色を再現でき、しかも非常に高輝度である。スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zürich)を含む国際的研究チームは、これが事実である理由を発見した。その量子ドットはいずれ発光ダイオード(LED)に使用される。
 ETHチューリッヒ、IBMリサーチチューリッヒ、Empaとアメリカの4研究機関の国際研究チームは、近年精力的に研究されてきたナノクリスタル類が非常に高輝度に輝く理由の説明を発見した。ナノクリスタルは、ペロブスカイトの格子構造に配列されたセシウムハロゲン化鉛化合物を含んでいる。
 3年前、ETHチューリッヒとEmpaの教授、Maksym Kovalenkoは、ナノクリスタル、量子ドット作製に成功した。「この微小な結晶は、極めて高輝度で高速発光源であることが証明された。これまで研究された量子ドットの中で最も高輝度で高速である」とKovalenkoは説明している。化学元素の組成およびナノ粒子のサイズを変えることで、全可視光スペクトルの色で光る様々なナノクリスタルを造ることにも同教授は成功した。これらの量子ドットは、将来のLEDsやディスプレイの構成要素として扱える。
 Natureに発表した論文では、国際研究チームは、ナノクリスタルを個別に、非常に詳細に調べた。研究チームは、ナノクリスタルの発光が極めて高速であることも確認することができた。以前に調べた量子ドットは、励起後、室温で20nsで発光するのが一般的である。「しかし、セシウムハロゲン化鉛量子ドットは室温で、わずか1nsで発光する」と論文の筆頭著者、Michael Beckerは説明している。

励起エネルギー状態の電子-ホールペア
 セシウムハロゲン化鉛量子ドットは高速であるだけでなく、非常に高輝度である理由を理解することは、個々の原子、フォトンや電子の世界に飛び込むことになる。「フォトンを使って半導体ナノクリスタルを励起することができ、これによって電子が結晶格子の元の場所から離れ、後にホールが残る」とETHチューリッヒの材料工学教授、David Norrisは説明している。結果は、励起されたエネルギー状態における電子-ホールペア。電子-ホールペアがそのエネルギーの基底状態に戻ると、光が放出される。
 ある条件で、異なる励起エネルギー状態が可能である。多くの材料では、これらの状態で最も可能性が高いのはダーク状態である。「そのようなダーク状態では、電子-ホールペアは、直ぐにはそのエネルギー基底状態に戻ることはできない、したがって発光は抑制され、遅れる。これが輝度の制約となる」とIBM研究所の研究者、Rainer Mahrtは話している。

 研究チームは、セシウムハロゲン化鉛量子ドットが他の量子ドットと異なることを示すことができた。彼らの最も可能性の高い励起エネルギー状態はダーク状態ではない。励起された電子-ホールペアは、大部分が直ちに発光可能な状態にある。「これが、高輝度に輝く理由である」とNorrisは話している。
 研究チームは、新たな実験データとAlexander Efrosの理論研究の助けを用いて、このような結論に達した。Efrosはワシントンの海軍研究所の理論物理学者。同氏は、量子ドット研究の先駆者であり、35年前に従来の半導体量子ドットがどのように機能するかを説明した初めての研究者の一人である。
 調べたセシウムハロゲン化鉛量子ドットは高輝度であるとともに、安価に製造できるので、それらはTVディスプレイに適用可能である。「また、これらの量子ドットは、素早い発光が可能であるので、データセンタやスーパーコンピュータ内の光通信での利用に特に関心が持たれている、そこでは高速で小さく、効率のよいコンポーネントが重要である」とMahrtはコメントしている。他に将来のアプリケーションは、量子システムの光シミュレーション。これは基礎研究や材料科学にとって極めて重要である。
 Norrisは、その新しい知見を新材料の開発に用いることに関心を示している。「これらの量子ドットが非常に高輝度である理由がわかると、同様の、あるいはもっとよい特性を持つ他の材料の設計も考えることができる」と同氏は話している。
(詳細は、www.ethz.ch)