August, 21, 2017, Livermore--ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)は、LEDメーカーSORAAと協働して、GaN結晶成長のための同社の研究規模プロセスの新しいコンピュータモデルを創ろうとしている。狙いは、プロセスの改善を窒化ガリウム(GaN)の採用拡大につなげること。中でも、固体照明やパワーエレクトロニクスの基板として利用拡大を狙う。
次世代LEDランプは、Blu-Rayプレイヤーで使用されるレーザと同様、従来のLEDよりも高輝度で、白色であるが、まだ大規模な置き換えには至っていない。利用しているGaN基板が高価であり、作製が難しいからである。
製造のためのエネルギー省ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC4Mfg)プログラムは、スーパーコンピュータリソースを業界パートナーに提供することを目的にしており、その助成を受けたプロジェクトにより、LLNLはLEDメーカーSORAAと協力してGaN結晶成長のために同社の研究規模の新しいコンピュータモデルを作成しようとしている。
プロジェクトを率いるLLNLのサイエンティスト、 Nick Killingsworthは、「使う結晶が高品質になればなるほど、ますます製品はよくなる」と言う。「GaNは、既存技術よりも単位体積当たりで扱うエネルギーが大きいので、より小さく、効率的なデバイスになる。したがって、高品質で低コストのGaNは、エレクトロニクス、LED照明、センサなど多くの分野でエネルギー利用を減らす。実に有望である」と話している。
SORAAは、GaN基板に成長させたGaN層を使ったランプを製造している。結果としての高出力バイオレットLEDは、サファイアやSiC基板を使用する従来のLEDよりも高輝度で白色であるだけでなく、安全でもある。青色光LEDは、長時間露光で健康に問題がでるからである。しかし、基板に必要な単結晶GaNを作製するSORAAの研究用プロセスは複雑であり、研究者がそのプロセスを解析するのは難しい。
「シミュレーションを通じた目標は、リアクタ内部で起こっていることの理解を深めることである。われわれには巨大なコンピュータがあり、関連する物理学を取り扱うことができる方法で、それを利用する専門家がいる。SORAAは、ワークステーションでシミュレーションを走らせてきた、したがってモデルにどんな物理学を組み込めるか、いくつの例を見ることができるか、これらは限られている。われわれはもっと詳細な物理学モデルを組み込んだモデルに立脚した」とKillingsworthは説明している。
1年の研究の後、Killingsworthのチームは商用コードを使って、起こっている成長プロセスに必要な高圧と高熱をシミュレートするコンピュータ流体力学を開発した。同モデルによりエンジニアは、リアクタの境界条件に対する変化がどのように成長プロセスに影響するかを調べることができる、とKillingsworthは指摘している。
「LLNLのシミュレーションにより、結晶が経験する、複雑なガスフローの研究、リアクタ内部の流体速度と温度変動のマッピングが可能になる」とSORAAのバルク結晶成長担当VP、Mark D’Evelynは話している。「われわれのチームは、シミュレーション結果と実験観察を密接に結びつけ始めている。SORAAは、LLNLが作成したモデルに基づいてさらに改善を進め、リアクタの様々なな構成をコンピュータでテストし、実験的試験に最適なものを選択していく」。
LLNL研究者は、よりきめ細かいメッシュを使って、リアクタ内で起こっている物理的条件の理解を深めることができた。また、環境が時間とともにどのように変化するかを理解するための実行時間依存シミュレーションを行うことができた。これにより、プロセスは時間的に安定していないことがわかった。すなわち、時間依存シミュレーションが必要となる。
しかし、時間依存シミュレーションが開発される前は、リアクタ内部の条件が、いわゆる極限値にあるので、研究者にはよりよい実験データが必要になる。
(詳細は、www.llnl.gov)