November, 30, 2023, 東京--東京理科大学理学部第一部物理学科の佐中薫准教授、Mark Sadgrove准教授、清水魁人氏(博士課程1年)、沖縄科学技術⼤学院⼤学(OIST)の根本香絵教授らの研究グループは、光学活性な希土類原子を添加した光ファイバ材料を使用する単一光子光源を発明し、室温において、単一光子を直接発生させられることを実験的に示した。
量子デバイス開発の鍵を握るのが、量子情報を伝送するために必要な、光子一つ一つを制御できる単一光子光源。単一光子光源は、欧州のベンチャー企業などで事業化へ向けた開発が進んでいる。しかし、これらは主に半導体などの結晶材料を使用する方式の光源で、製造コストが高く、波長に制限がある上、冷却装置が必要となるなど、実用化までにクリアすべき課題がまだ多く残されている。
研究チームは、これらの結晶材料とは全く異なるアプローチをとり、非晶質材料である光ファイバを使用する方式を提案した。光ファイバを利用する方式では、一般的なレーザ材料を転用するのでコストが低く、添加する希土類原子の種類によって幅広い波長が選択可能になる。さらに、室温でも稼働するため冷却装置を必要としないことも、光ファイバを使用する方式の大きなメリット。
研究グループは、光活性な希土類原子を添加した光ファイバを熱処理によって延伸加工を行った。これにより、添加された希土類原子間の平均距離が光の回折限界距離以上に分離され、単一光子を発生させることに成功した。同手法は、室温において光ファイバ内で空間的に孤立して分布しているそれぞれの単一希土類原子を個別に位置特定することが可能であることから、大規模な量子光ネットワークなど、さまざまな波長で単一原子や単一光子を用いる量子技術への応用が期待される。
研究成果は、2023年10月16日に国際学術誌「Physical Review Applied」にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.tus.ac.jp)