June, 5, 2015, Itzehose-- シリコンマイクロミラーは、超高速でレーザビームを動かすことができるのでオペレータは加工対象物への入熱量を非常に正確にコントロールすることができる。
しかしこれまでは、シリコンマイクロミラーは、レーザ切断や溶接に使えるほど強固ではなかった。今では、フラウンホッファの研究チームが切断や溶接作業で使える高速で耐久性の高いミラーを開発した。
今日の自動車や航空機製造業では、車輌の重量を減らして燃料消費を改善するために、アルミや特殊な高強度鋼など、様々な材料が使われている。しかし、これらの新材料、それらの組合せによって製造は新たな課題に直面している。これは、特にレーザを使った金属の切断や溶接に当てはまる。これまで、レーザシステムは個別材料に慎重に適合させなければならなかった。多くの場合、特殊工程のために特別にインストールされる特別なオプティクスが必要になる。
フラウンホッファシリコン技術ISITとフラウンホッファの材料とビーム技術研究所のエンジニアが共同開発した新しいレーザミラーは、レーザ加工において一段と高い柔軟性を提供している。シリコンからエッチングしたマイクロミラーが柔軟なレーザシステムの中核にある。このMEMSミラーは、スキャニングミラーであり、レーザビームの方向を変えて作業対象物に正確に向ける。これまで、このような小型ミラーは出力が数mWのレーザでしか使えなかった。これは、車のフロントガラスのヘッドアップディスプレイには十分であったが、レーザ切断や溶接には使えない。高出力を受けていたなら、ミラーは溶けていたはずだ。共同プロジェクトで開発された新しい保護コーティングと特殊マウンティングにより、ミラーは今ではkW範囲のレーザ出力にも耐えられるようになっている。これはアルミやシート鋼の加工に十分なレベルである。
この薄いMEMSミラーの主な利点は、非常に高速で前後に回転でき、最大100kHzの周波数に達することである。これによってレーザエネルギーは、1kHzでしか回転しない従来のレーザシステムに比べて非常に効果的に分散させられる。レーザは、焦点に特殊なエネルギープロファイルを持っており、常に同じ量のエネルギーを投入する。ミラーがゆっくり回転すると、そのエネルギーは広がらず、溶接点に効果的に投入できない。「それに対して、レーザビームの高速振動によってわれわれは熱を広げることができ、個別の加工作業に効果的に調整することができる」とフラウンホッファIWSのレーザアブレーション、切断部門のスペシャリスト、Dr.-Ing. Andreas Wetzigは説明している。
研究室の実験で実証したように、このMEMSミラーは、切断、溶接、表面硬化など、あらゆる種類の可能性を開くものである。「われわれは、例えば、アルミと銅を溶接できる」。アルミアロイのみの溶接も簡単になる。現在、アルミの溶接線は穴だらけになることが多い。これはアロイからある物質が気体を発し、溶接工程中に泡が形成されるからである。このマイクロミラーを用いると、物質が完全にガスを放出し終わるまで溶解物を液体にとどめるように熱入力を制御することができる。
現在市販の固体レーザは金属の切断では非常に優れているが、切断エッジはCO2レーザで切断した時にいつでも得られる品質には及ばない。MEMSらラーを使った的を絞った熱入力によってエッジの粗さが改善され、切断エッジの下側に形成されるバリが避けられる。
新しいMEMSマイクロミラーが大出力レーザで使えるのは、その特別な反射コーティングだけでなく、その普通ではないサイズのためでもある。通常、MEMSミラーは直径が1~2㎜であるが、この新しいMEMSミラーは、最大直径2㎝であり、より大きなビーム径、非常に高出力のレーザでも操作することができる。開発者にとっての難しさは、そのサイズにもかかわらず高い周波数を達成することにあった。「この問題への対処で、振動ミラーの減衰を最小限にするために、空気を抜いた真空ポッドの中でミラーを動作させる」とフラウンホッファISITのMEMSミラーエクスパート、Ulrich Hofmann氏は説明している。