June, 10, 2024, 東京--東京大学大学院工学系研究科の長藤圭介准教授、趙漠居(チョウバクイ)講師、大河原崚大学院生(研究当時)らの研究グループは、SOLIZE株式会社の西来路正彦研究員、吉﨑寛研究員と共同で、金属積層造形プロセスを高速で最適化するためのその場観察の手法を開発した。
金属積層造形は、従来の加工方法に比べて複雑な構造を造形できる反面、サンプルの造形と評価に時間がかかるため、プロセスパラメータから最適な条件を探索するには勘・コツ・経験に依存してきた。
研究では、サンプルの造形中の天面を観察することで、内部の3次元構造を予測する方法を開発した。
研究成果は、2024年6月3日(日本時間)に、国際生産工学アカデミー誌「CIRP Annals – Manufacturing Technology」にオンライン掲載された。
研究内容
研究では、多孔質構造の3Dプリンティング試作中のサンプルの天面を1回撮像し画像処理することで、内部の構造を予測する方法を開発した。3次元構造をX線CTで解析し、空隙率と平均孔径を算出し、その結果に合うような、天面撮像方法と画像処理を行うことで、内部の構造を予測することができる。この方法を用いて、試作サンプルを取りはずすことなく、1回の撮像で内部の構造を予測することができる。25個同時に試作した場合で、X線CT撮像と比較して、18分の1の測定時間で予測することができ、3次元画像を2次元画像から予測する予測確率に相当する決定係数は0.88と高い値を達成できた。SOLIZE株式会社にてサンプル作製および光学顕微鏡撮影、東京大学にてX線CT撮像、両者で予測アルゴリズム開発をった。
今後の展開
この手法は、膨大なプロセスパラメータ候補から素早く最適化する、すなわち探索を大幅にハイスループット化する「プロセスインフォマティクス」の計測方法として有用な方法で、新たなプロセスの発見への強力なツールとなり得る。
研究で対象としたステンレス材料の多孔質構造は航空宇宙分野の次世代の熱交換器を対象にしたもので、その製造パラメータの最適化のための開発期間を飛躍的に短縮する方法として期待される。
熱交換機能の構造だけでなく、高強度構造、高耐食性構造にも適用でき、医療分野、モビリティ分野にも貢献する。
(詳細は、https://www.t.u-tokyo.ac.jp)