January, 5, 2024, 東京--東京大学大学院工学系研究科の島田啓太郎大学院生、中川桂一准教授らの研究チームは、超短パルスレーザから数十ピコ〜数ナノ秒のパルス間隔を持つギガヘルツ繰り返し(GHzバースト)パルスを生成し、各パルスの形状を個別に操作可能な手法「Spectrum shuttle」を開発した。
バーストパルスの生成は、超高速撮影やレーザ加工において重要であるが、GHz領域への展開や各パルスの形状操作において、既存手法では原理的な限界があった。この研究では、光を色ごとに分ける回折格子、ミラー、空間光変調器を用いて超短パルスを色ごとに立体的に操作することで、それぞれの色にGHz領域(数十ピコ〜数ナノ秒間隔)の時間差を与え、かつ個別に形状を操作することを可能とした。また、同手法を超高速分光イメージングに応用し、ガラスにレーザを集光することで生じるレーザアブレーション中のプラズマ及び衝撃波現象の超高速分光イメージングを実証した。この手法は、サブナノ〜ナノ秒現象を可視化する超高速撮影や、レーザ加工や音響波生成におけるレーザアブレーションの制御など、幅広い光学技術への応用が期待される。
研究内容
研究では、自由空間内において、超短パルスから、個別に形状を操作可能なGHzバーストパルスを生成する光要素技術「Spectrum shuttle」を開発した。同手法では、2つの回折格子により分散平行光となった超短パルスが、3次元的な傾斜を持つ平行なミラーペアにより、色ごとに空間的に分離する。各色のパルス形状は空間光変調器によりそれぞれ操作され、元の光路を戻ってビームスプリッタにより取り出される。この時、各色はミラーペア間の往復回数が異なるため、往復回数に応じた時間差が生じる。これにより、各パルスの色と形状が異なり、ミラーペア間の距離に応じたパルス間隔を持つ、GHzバーストパルスを生成できる。研究では、Spectrum shuttleを用いて、色が離散化されたGHzバーストパルスを生成した。また形状操作の例として、パルスの位置操作及びピークの分割を実証した。
さらに、Spectrum shuttleを用いて、波長800nm帯域と波長400 nm帯域という2つの大きく異なる色の範囲においてGHzバーストパルスを生成し、2色での超高速分光イメージングに成功した。超短パルスレーザを用いたレーザ加工では、ガラスへの強い光の集光によりアブレーションが生じ、プラズマと衝撃波のダイナミクスが進展する。この超高速かつ繰り返し起こらない現象を、波長800 nm帯域と波長400 nm帯域で同時に超高速撮影を行うことで、250ピコ秒間隔(40億コマ/秒相当)という超スローモーションの撮影像を取得した。さらに、波長800 nm帯域と波長400 nm帯域のそれぞれで取得された像の見え方の違いから、生じている現象の詳細な解析を実現した。
論文情報
雑誌名:Advanced Photonics Nexus
題 名:Spectrum shuttle for producing spatially shapable GHz burst pulses
著者名:Keitaro Shimada, Ayumu Ishijima, Takao Saiki, Ichiro Sakuma, Yuki Inada, Keiichi Nakagawa*
DOI:10.1117/1.APN.3.1.016002
URL:https://doi.org/10.1117/1.APN.3.1.016002
(詳細は、https://www.t.u-tokyo.ac.jp)