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3Dプリンティングを使い、新「設計」チタン合金

July, 7, 2023, Sydney--シドニー大学のPro-Vice-Chancellor (Research Infrastructure) であるSimon Ringer教授を共同リーダーとする研究チームは、合金と3Dプリンティングプロセス設計を統合することで新しいクラスの強力なチタン合金を作製した。
Natureに発表された研究は、チタン合金の応用拡大に役立ち、持続可能性改善、革新的材料技術を促進する。

チタンとチタン合金は、幅広い範囲の技術にとって重要である。研究者は、航空宇宙、バイオメディカル、化学工学だけでなく、防衛、宇宙およびクリーンエネルギー移行におけるアプリケーションにより持続可能な新しい種類の高性能チタン合金が有望であるとみている。

研究主導は、シドニー大学とRMITが、メルボルンの企業Hexagon Manufacturing Intelligenceと提携して行った。
Simon Ringer教授は、「この研究は、幅広く調整可能な特性、高い製造性、排出削減の大きな可能性、類似システムにおける材料設計の洞察を可能にする新しいチタン合金システムを実現する」と述べている。

その新材料は、長年チタン産業のバックボーンだった合金クラスに属する。それらは、αチタン相とβチタン相と呼ばれる2つの形態のチタン結晶の混合物で構成されており、それぞれが特殊な原子配列に対応している。

チタン合金は、伝統的に、アルミニウムとチタンを加えることで製造されたが、研究チームは、酸素と鉄の利用を研究していた。これらは、豊富に存在し安価な元素であり、強力な安定性として機能し、αおよびβチタン相を強化する。

「重要な成功要因は、αチタンとβチタン相内および間の酸素と鉄原子のユニークな分布である」とRinger教授は、コメントしている。同教授は、航空宇宙、機械およびメカトロニクスエンジニアリング学部、材料科学・工学の専門家。

「われわれは、αチタン相に酸素のナノスケール勾配を設計した。特徴は、強力な高酸素セグメントと延性がある低酸素セグメント(細い糸に成形された後に、その強度を維持)であり、これによりわれわれは、局所的原子結合をコントールでき、したがって脆化の可能性を緩和できる」。

研究リーダーであるRMITのMa Qian名誉教授によると、チームは、その設計に循環型経済思考を埋め込んだ。産業廃棄物や低品位の材料から新しいチタン合金を作る大きな裏付けとなる。

研究者によると、従来製造プロセスで強力で延性のあるα-βチタン・酸素・鉄合金の開発を妨げる2つの課題があった。

「1つは、口語的に『チタンに対するクリプトナイト』と表現される酸素がチタンを脆弱にする可能性があること、もう1つは、鉄を加えると、βチタンの大きなパッチ形式で深刻な欠陥につながる可能性があることだ」とMa Qianは指摘している。

チームは、Laser Directed Energy Deposition (L-DED)を使用した。これは、大きく、複雑な部品の作製に適した3Dプリンティング工程である。これにより、金属粉末から合金を作製。商用合金に匹敵する独自のマイクロ構造を開発する。

論文の筆頭著者でRMIT副長官の研究フェローであるTingting Song博士は、「3Dプリンティングは、新しい合金の作製で根本的に異なる方法を提供し、従来のアプローチに対して明確な利点がある。廃棄物スポンジチタン・酸素・鉄合金、「規格外」のリサイクル高酸素チタン粉末、われわれのアプローチを使用し、高酸素スクラップチタンでできたチタン粉末を再利用する潜在的なチャンスがある」と説明している。

シドニー大学で研究し、研究の後半で香港理工大学に移動した論文の共著者であるZibin Chen博士は、その研究が広範囲に及ぶ影響を持つとみている。「酸素脆化は、チタンだけでなく、ジルコニア、ニオブ、モリブデンなどの他の重要な金属やその合金にとっても冶金学的に大きな課題である。われわれの成果は、3Dプリンティングとマイクロ構造設計を通じてこれらの酸素脆化問題を緩和するテンプレートとなる可能性がある」。