Science/Research 詳細

レーザ指向性エネルギー堆積法(LDED)による金属積層造形プロセスの数値モデル化

February, 7, 2023, 東京--東京理科大学工学部機械工学科の荒井正行教授、同工学研究科機械工学専攻の村松寿和氏(2021年度修了生)、公立諏訪東京理科大学工学部機械電気工学科の伊藤潔洋助教(当時 工学部機械工学科助教)の研究グループは、近年、注目を集めている次世代型レーザ指向性エネルギー堆積法を数理モデリングするとともに、熱流動・相変態熱粘弾塑性解析を連成させた数値解析技術により金属造形加工プロセスを三次元シミュレーションすることに成功した。

これまでの3Dプリンタ金属造形技術では、機械的に敷き詰められたパウダーベット表面に対してレーザや電子ビームを照射して、溶かし固めていく方法で造形されてきた。このため、加工設備が大型化する傾向にあるとともに、造形加工後に大量の金属粉末が廃棄されるといった問題点があった。このような問題を克服するために、近年、指向性エネルギー堆積法が注目されている。この技術は、レーザビームの焦点に金属粉末を集積させて溶融積層する加工技術。この技術のメリットは、装置がコンパクトであることに加え、金属粉末の廃棄を大幅に削減できる点にある。さらに、基材表面に3D形状に金属粉末をその場造形できるという点で、これまでにない新しい加工技術として注目を集めている。しかし、造形加工条件については試行錯誤的に決定されており、同技術を産業界に広く展開していくためには、最適な造形加工条件を決定する手法の開発が求められている。

研究グループは、金属粉末が堆積して積層を構成する要素を自動的に生み出していくデス‐バースアルゴリズムによる成膜プロセスを考案した。積層要素には、熱輻射—熱伝導モデルならびに粘塑性—熱弾塑性構成モデルを組み込むことで、金属粉末の溶融から凝固過程までの幅広い状態変化をコンピュータ上で忠実に再現することができた。これを有限要素解析手法によりコーディングし、加工解析システムとして構築した。これにより、事前に造形加工条件の決定、温度分布、変形状態、残留応力分布の予測が可能となる。

研究成果は、2022年11月23日にJournal of Thermal Spray Technologyにオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.tus.ac.jp)