November, 22, 2021, Livermore--レーザベース3Dプリンティング技術は、設計の複雑さを大幅に拡大することで金属部品の製造を変革したが、従来金属プリンティングで使用されているレーザビームには問題があり、これは欠陥や性能不足につながる。
LLNLの研究者は、レーザ粉末床溶融(LPBF)などハイパワーレーザプリンティングプロセスで一般に使われるガウシアンビームの代替形状を研究することでその問題に取り組んでいる。
Science Advancesに発表された論文で、研究チームは、ベッセルビームとして知られる珍しい光ビーム形状(ブルズアイパタン想起)で実験している。これは、自己回復、非回折など、多くの独特の特性を持っている。チームは、この種のビームが孔形成や「キーホーリング」の確率を減らすことを発見した。「キーホーリング」とは、ガウシアンビームを使って実行するLPBFにおける気孔率誘発現象である。
LLNL研究者の指摘によると、ベッセルビームのような代替形状は、LBPF技術における主要懸念を緩和する。即ち、レーザパワーと金属粉末が接触するところで、大きな温度勾配と複雑な溶融プールの不安定性が起こる。この問題は、ほとんどの市販、ハイパワーレーザシステムが一般に出力するガウシアンビーム形状が原因である。
LLNL研究者、Thej Tumkur Umanathは、「ガウシアンビームの利用は、火炎放射器を使って食べ物を料理するようなものだ。熱が素材の周りにどのように配置されるかを全くコントロールできない」と指摘している。「ベッセルビームでは、センタービームからのそのエネルギーの一部を再分配する。つまり熱プロファイルを操作し、温度勾配を減らして、微細構造粒子の微細化を促進し、最終的により高密度なパーツ、平滑な表面となる」。
Tumkurは、2019年、その研究でLLNLのPostdoc Research Slamコンペで一番になった。同氏によると、ベッセルビームは、従来のガウシアンビーム形状に対して、レーザスキャンパラメタスペースを著しく拡大する。結果は、浅からず、キーホールに悩まされることがない理想的な溶融プールである。キーホールとは、LLNL研究者が以前に発見したように、レーザが、強い蒸気を作り出し、構築中の金属基板の深い孔の原因となる。キーホーリングは、溶融プールにバブルを作り出す、それが孔を形成し、最終製品の機械的性能の劣化となる。
従来のビームのもう1つの欠点は、ビームが広がるにつれて回折しがちであること。ベッセルビームは、非回折特性により、焦点深度を深くする。その結果、ベッセルビームを使うと、研究チームの観察では、レーザの焦点に対するワークピースの配置許容度が向上する。配置は、産業システムにとっての課題である。金属粉末が堆積されるたびに集束ビームの焦点深度内に、高価で敏感な位置決め技術の進行中設定に依存することがよくあるからだ。
「ベッセルビームは、イメージング、顕微鏡、他の光学アプリケーションで、その非回折、自己治癒特性で広範に利用されている。しかしビーム形状のエンジニアリングアプローチは、レーザベースの製造アプリケーションではかなり珍しい。われわれの研究は、溶融プールダイナミクスの制御を達成するためにデザイナービーム形状を組み込むことで、金属AM界に光物性と材料工学の間の見かけ上の分断に対処する」(Tumkur)。
LLNL研究チームは、ドーナツ形状を作るために2つの円錐レンズを通してレーザビームを走らせることでビームを成形し、その後にそれを特別なオプティクスとスキャナを通し、中心ビームの周りに「リング」を作った。LLNLのAdvanced Manufacturing Laboratoryにある商用プリンティング装置にインストールし、研究者は、その実験セットアップを使って、ステンレススチール粉末からキューブなどの形状をプリントした。
高速イメージングにより研究チームは、溶融プールのダイナミクスを調べ、溶融プール乱流の著しい低減と「スパッタ」の軽減を観察した。スパッタは、工程中にレーザ経路から飛び散る金属の溶融粒子であり、これは一般に孔の形成につながる。
機械的な研究とシミュレーションで、チームは、従来のガウシアンビームで構築された構造と比較してベッセルビームで構築されたパーツの密度が高く、強力であり、ロバストな引張特性が優れていることを確認した。
「業界は、以前から、欠陥を最小化するLPBFプロセスの制御性向上を探求してきた。レーザビームに複雑な構造を導入することで、レーザと材料の相互作用、熱蒸着、最終的にはプリントされたものの品質を正確に制御する柔軟性向上が得られる」とIbo Mattewsは、話している。同氏は、LLNL材料科学部リーダーとなる前、プロジェクトの主席研究者だった。
LLNLコンピュータサイエンティスト、Saad Khairallahは、LLNL開発マルチフィジックスコードALE3Dを使って、金属粉末材料のシングルトラックで、ガウシアンとベッセルビームレーザ形状の両方をシミュレートした。結果としてのトラックを比較すると、チームは、ベッセルビームがガウシンアビームに対して改善された温度勾配を示していることを確認した。また、ベッセルビームではエネルギー分配改善が達成されており、ガウシアンビームに見られる「ホットスポット」生成が回避されていた。ガウシアンビームは、深い溶融プールを作り、孔を形成する。
「シミュレーションにより、起きている物理学の詳細な診断が得られ、したがって、われわれの実験成果の背後にある基本的なメカニズムを理解することができる」(Khairallah)。
LLNLで研究されている3Dプリント金属部品の品質向上のための多くの経路の1つに過ぎないが、ビーム成形は、代替スキャニング戦略と比べて安価なオプションである。それは、簡単な光学素子を組み込むことで安価にでき、ガウシアンビームで構築されるパーツに一般的に必要とされる後加工技術に関わる費用と時間を低減できるからである。
「ロバストで、欠陥のないパーツ製造が強く求められている。費用効率のよい方法で非常に大きな構造の製造能力が必要とされている。3Dプリンティングを真に産業基準に適合させ、従来の製造アプローチを超えるには、非常に短い時間領域と微小構造スケールで起こる、ある基本的な問題に対処する必要がある。ビーム成形は、採用すべき方法である。幅広い範囲の金属を一様にプリントする際に適用でき、商用プリンティングシステムに組みこめるからである。他の代替技術の傾向に見られるような大きな組込課題は存在しない」(Tumkur)。
LLNLの研究チームは、:進行中のGE Global Researchとの提携の一環として、他のビーム形状エンジニアリング戦略で実験を行っており、プリントされたパーツの品質をさらに制御するために、複雑なレーザビームおよび偏光成形アプローチの研究を行う予定である。
(詳細は、https://www.llnl.gov)