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超短パルスレーザ発振器で350W平均パワー

November, 21, 2019, Zurich--記録的に高い平均出力350Wサブピコ秒薄型ディスクレーザ発振器の実証でETH-ZurichのUrsula Kellerのグループは、新たなベンチマークを設定し、さらなる強力なレーザへ挑戦する。
 超高速レーザ光源は、高強度場アト秒時間分解能実験から、材料のマイクロメートル精密加工まで、拡大が続く基礎科学研究や産業アプリケーションの中心にある。さらに限界に挑むために、繰り返しレート数100MHz、平均出力数100Wが必要とされている。そのようなハイパワーレーザの実現に、特別に注目される方式は、多段増幅システムに依存するのではなく、レーサ発振器からの出力拡大により直接生み出すことである。多段増幅システムアプローチは、非常に複雑である、それに対してレーザ発振器から直接出力を生み出すアプローチはロバストであり、潜在的にコスト効果が優れたデバイスになる。Optics Expressに発表された論文によると、量子エレクトロニクス研究所(Institute of Quantum Electronics)、Ursula Kellerグループは今回、「出力拡大」アプローチを新たな水準に押し上げた。研究グループは、簡素な共振器と高繰り返しレートをこのタイプのレーザで記録的に高い平均パワーを統合する光源として発表している。
 ETHチームは、いわゆる薄型ディスクレーザ発振器に取り組んでいる。ここでは利得媒体、発振につながる量子プロセスが起こる材料が、ディスク形状になっており、一般に数100µm厚である。この形状は、比較的大きな表面積となり、冷却に役立つ。しかし、熱効果は、大きなボトルネックのまま残っていた。2012年以来、記録的な出力は275Wで止まっていた。
 これまで、Kellerグループが開発した薄型ディスクレーザ技術におけるいくつかの進歩をまとめて、Ph.D学生、Francesco Saltarelli、シニア研究者、Christopher Phillipsらは、思い切った措置をとり、平均パワー350Wを実現した。わずか940fsのパルス幅、39mJのエネルギー、繰り返しレート8.88-MHz。科学と産業の両方に直近のアプリケーションがある。
 この研究の重要な点は、弊害がある熱効果を加えることなく、利得媒体を通したポンプビームの複数パスを可能にする方法を見いだし、したがって関連するコンポーネントへの応力を減らしたことである。熱による影響を制御できることで、275-Wレベルを確実に超え、新たなベンチマークを刻む道が開かれた。ここで開発したアプローチは、さらに可能性があり、500Wを超える出力が現実的であるように見える。さらなる改善で、キロワットレベルが見えてくるかも知れないと研究チームは考えている。