October, 10, 2019, 大阪--大阪大学、広島大学、北京大学で構成される国際研究チームは、従来の研究よりも約10倍長い4ピコ秒にわたって、高強度レーザをプラズマに照射し続けることにより、レーザによる電子加速の効率が、従来法と比べて4倍以上向上することを発見した。
この効率向上には、プラズマ中で突発的に発生するキロ・テスラ級の強磁場が関与していることを解明し、突発的な磁場発生が起こる時刻を予測する方程式を導出した。この方程式を使うことで、高効率に電子を加速するのに必要なレーザパルス幅(照射時間)を容易に決定することができる。
研究成果は、英国物理学誌「Communication Physics誌」に公開されました。
研究成果の要点
・高強度レーザをプラズマに照射すると電子やイオンが加速される。このレーザ加速器は、従来の加速器よりも高いピーク強度を有するビームを生成できる点が注目され、世界中で研究されている。
・加速エネルギーの向上のために、レーザの高強度化が競われているが、その結果として装置への負荷が大きくなっている。研究チームは、レーザを長時間照射することで、レーザの強度を上げずに装置負荷を低減しつつ、加速エネルギーが向上することを発見した。
・世界最大級のハイパワーレーザ施設LFEXから照射される高強度のレーザ光を、従来よりも約10倍長い時間にわたって物質に照射し続けることで、4倍以上の効率で高エネルギー電子の加速に成功した。
・コンピュータ・シミュレーションを用いた解析を行い、高効率な電子加速には、プラズマ中で突発的に発生する地上最大級のキロ・テスラ級の強磁場が関与していることを発見した。
・誰でも使用可能な加速機構にするため、今回発見した効率的な電子加速に必要なレーザパルス幅を決定する方程式を導出した。
・この研究は、レーザ核融合エネルギーの実現に貢献すると共に、小型医療用粒子線加速器などへの応用も期待される。
(詳細は、https://resou.osaka-u.ac.jp)
国際研究チーム
大阪大学レーザ科学研究所大学院生の小島完興さん(研究当時:大阪大学理学研究科博士後期課程、現在:量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門関西光科学研究所研究員)、藤岡慎介教授らの研究グループおよび、自然科学研究機構核融合科学研究所、広島大学工学研究科、レーザ技術総合研究所、北京物理学研究所の研究者らで構成。